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人物紹介


終止符
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K先輩に電話する時、指が震えました。
いつもドキドキしながら電話をしていましたが、その比では無いぐらい、手に物凄い汗をかいていました。
電話に出たのはK先輩本人でした。

「もしもし」

と言っただけで、「おー」という返事が返って来ました。
声だけで、私と分かってもらえる事に、少し喜びを感じました。
何から話し始めたか、記憶がありません。
多分、バイト休みですか?とか聞いたような気がします。
そして、急に、言われたのだったと思います。

「そうそう。お前、あのセーターって手編み?」

K先輩に言われた瞬間に、心臓が口から飛び出るかと思うほどドキっとしました。
私は内心、慌てました。
やっぱり、あの時は気付いてなかったんだ。
手編みと気付いて、何を思ったんだろう?

「あ、すみません。」

咄嗟に謝ると

「言ってくれれば良かったのに」

と言われました。

「いや、だって、袖の長さも変だし、ヘタクソだし、すぐに気付くかと思って。
 変だから、着なくていいですよ。本当にすみません」

一気に訳の分からない言い訳めいたことを口走った気がします。
K先輩は、少し笑ったように

「もう、着ちゃったし」

と言いました。

「え?あ、でも、もう着ないで下さい。本当にいいですから。すみません」

かなり、パニックになっていました。
そんな私とは裏腹に、K先輩は落ち着いた優しい声で

「なに、一人で焦ってんだよ。」

と笑いながら言いました。

「いや、あの・・・本当にすみません」

私は謝る以外に言葉が出てきませんでした。
さらにK先輩に、

「手編みって重いのなー」

と言われ、ますます私は萎縮していきました。
もう、言葉が出てきません。なんだか、泣きそうでした。

「でも、すっげー温かいし。ちょっとデカいけどな」

そう言って、K先輩は笑いました。
私は、

「やっぱり大きかったですよね?首もキツイですよね?もういいです・・・」

と言い、早くこの話を終わりにしたくて仕方がありませんでした。
すると、K先輩は私の落ち込みに気付いたようで、

「ごめんごめん。」

と言い、

「本当に嬉しかったよ」

と言ってくれました。
その瞬間、最初、自分がK先輩に電話を掛けた目的を思い出しました。

私は、中2の時からずっとK先輩が一番でした。
高校に入って再会してから、少しずつ距離が近くなっていくにつれて、苦しくなっていきました。
もう、3年もK先輩を想い続けていました。
先輩が自分をどう想っているかも分からず、ズルズルと来ました。
それを、もう。
年内で終わりにしたい。
私は、K先輩との関係に終止符を打つ覚悟で電話をしたのでした。

私が黙ってしまっていたので、K先輩に

「どうした?なんか、俺、変なこと言ったか?」

と心配そうな声で聞かれました。

「いえ。そうじゃなくて・・・変なこと、聞いても良いですか?」

と私は勇気を出して聞きました。
K先輩は、「なに?」と少し不安そうに返事をしました。
私は、受話器に手を当てて、K先輩に聞こえないように深呼吸を一度大きくしてから、

「私のこと、どう思ってますか?」

と早口で一気に尋ねました。
K先輩は、思いがけない質問に、かなり驚いた様子で

「ちょっちょっ・・・お前、今、家?」

と言いました。
かなり慌てている感じでした。

「そうですけど・・・」

と返事をすると

「一回、電話切っていいか?」

と聞かれました。
「え?」と聞き返すと

「ちょっと・・・・あー・・・掛け直すから、ともかく一回切るわ。」

と言って電話を切られてしまいました。

しばらく、私は何がなんだか分からず、電話をジッと見つめていました。
そして、我に返ると、
とうとう聞いちゃたんだ・・・
どうしよう?
きっとK先輩は物凄く困ってる・・・
もう、掛けてこないかもしれない。
終っちゃうのかなぁ・・・・・
でも、どうしても聞きたかったんだ。
終ってもいいんだ。終わりにしたかったんだ。いいんだ。

多分、5分以上、そんなことを考えながら電話の前に座り込みつづけていたと思います。
もしかしたら、10分ぐらい経ったのかもしれません。

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私はわざと自分にそういい聞かして電話に出ました。
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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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