待ちぼうけ
....................................................................................................................................................................
|
K先輩の家に行く為に、数ヶ月前まで利用していたバスに乗りました。 少しだけ、バス停で偶然に先輩に会える事を期待していましたが、そう上手くいくはずありません。 心臓は、バスに乗ってる間中、バクバクしていました。 3年前のクリスマス。 私の家にプレゼントを持って来てくれた時のK先輩も、今の自分と同じだったのだろうか? そんな事を考えたりもしました。 バスが、以前の私が住んでいた家の前を通った時、体の奥がギュっとなるような感覚がしました。 もう、そこには既に別の家族が住んでいました。
K先輩の家の近くのバス停に着いてから、私は先輩の家に電話を入れました。 お母様が出て、まだ帰って来てないと言われました。 ならば、家族の方に渡して帰ろうか?と考えましたが、夜19時過ぎに訪ねて行くのは非常識かもしれない。と思いました。 私の門限の20時には、直ぐにでも帰らないと間に合いそうにありませんでした。 でも、しばらく待つ事にして、K先輩の家の前まで歩いて行きました。 K先輩の家を見上げて、先輩の部屋はどこだっただろう?と半年前の出来事が急に蘇ってきて、また体の奥がギュっと締め付けられる感覚がしました。
あまりその場に立っていると、怪しい人間と思われるような気がしたので、少し歩いてバス通りにでました。 バス停の側で待とうかと思ったのですが、K先輩だけじゃなく、その場所にはかつての同級生も住んでいるので、見付かりたくないと思いました。 バスが来ました。 家の塀に隠れるようにして、バスの中を見ましたが、先輩らしい姿は見えません。 少し歩いて、バス停が見える位置まで移動し、遠くから降りてくる人を見ましたが、やっぱり先輩は乗っていません。 そんな事を繰返し、バス3台を見送りました。
バス停に降り立ち、K先輩の家に電話を入れてから40分以上経っていました。 もしかしたら、K先輩を見過ごしているかもしれない。 でも、一時間も経たない内に二度も電話をしては、家の人に変に思われるかもしれないと思うと、電話をする勇気が出ませんでした。 せめて、一時間は待ってみよう。
そして、また一台、バスが来ました。 やっぱり、先輩は乗っていませんでした。 時間はもう門限の20時をまわってしまいました。 私は、再びK先輩の家に電話をしました。 またお母様が電話に出て
「まだ、帰って来てないのよ。ごめんなさいね」
と言われました。
これから家に帰っても、門限を既に一時間ぐらい過ぎてしまいます。 帰ってからの事を考えると、気分は最悪でした。 親に怒られる覚悟をしてまでせっかく待っていたのに、会えないなんて。 やっぱり、縁が無いんだろうな・・・と悲しくなりました。 こんなことなら、来た時にすぐ先輩の家に行って、せめてプレゼントを家族の人に渡してしまえば良かった。 色んな後悔が頭を駆け巡りました。
..................................................................................................................................................................
|