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人物紹介


待ち伏せ
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K先輩が私にしてくれる事は、どれを話しても友達に

「亞乃のこと好きなんだよ」

と言われる事ばかりでした。
でも、「そうかなぁ・・・」と一瞬、期待する自分を、勘違いしてはいけないと、すぐに戒めるように思い直していました。

私には、自信が全くありませんでした。
K先輩に好かれるような女では無いと思っていました。
それに、嫌われたわけでは無いけれど、一度振られているのは事実で。
K先輩は共学で、沢山の私よりも大人っぽい女性が周りに居て。
もう一度。
なんて、そんなチャンスは巡っては来ないだろうと思っていました。
中2のあの時からずっと。
他の人を好きになりそうになっても、結局はいつでもK先輩と比べてしまっていました。
だから、きっと私はK先輩以外を好きになれないだろうと思いました。
ずっと片想いであっても、少しでもK先輩の近くに居られるのならそれで良いと。

でも、少しずつK先輩が私に親しげな対応をすればするほど、私は期待をしてしまう自分を止められなくなっていきました。
本当は、毎日だって先輩の声を聞きたいと思っていました。
でも、しつこくしたくなくて、我慢して週一回と決めていました。
電話をする口実を、いつも探していました。
K先輩と話すたびに、今日は上手く喋れた。今日は最悪。
そんな凸凹を繰り返して、時にはもう電話しないと思う事があっても、すぐに又声が聞きたい衝動に駆られました。
そんな私にとって、アルバムを貸してくれたという事は、また返すと言う会える口実が出来ます。
いつもより気楽に電話を掛けられます。
それに、貸すという行為は、また会っても良いと思っている証拠で。
K先輩は、私に会うのを嫌がってはいないんだ。
そう思いました。

それまでの事を冷静に考えれば、いつでも誘ってくれるのはK先輩でした。
文化祭の時には「亞乃」と呼び捨てされました。
端から見れば、十分親しい仲と思われる対応をK先輩はしてくれていました。
それでも、私には自信が無かったのです。
それが、「貸してくれた=もう一度会いたいと思ってる」と考える事で、
もしかしたら好かれているのかもしれないと思うようになっていきました。

まさに、有頂天でした。
いつ電話しよう?いつ、返そう?
授業中もバイト中も考えていました。
バイトの帰り道に、電話をしようかと思いました。
でも、返してしまうと、今晩一日しか写真を見れなくなります。
もう少し、見ていたいと思いました。普段、顔をまともに見れない分、目に焼き付けたいと思いました。
だから、今日一日ぐらいは・・・。そう思って連絡をしませんでした。
家に帰ると、眠る時間を忘れてずっとアルバムを見つづけました。

翌日、やっぱり早く返さないとK先輩も困るんじゃないか?と思い、バイトの帰りに電話をしました。
電話に出たK先輩は、

「まだ、いいよ。」

と言いました。
そして、その演奏会の時の話などを話してくれました。
とても面白く、楽しい電話でした。
私の中に、常にあった「迷惑だったらどうしよう」という不安が無くなっていました。
友達にも、「幸せですって顔に出てるよ」とからかわれる程、私は何をしていても楽しくて、絶好調でした。

毎晩、K先輩の写真を見ていられるというのは、物凄い幸せでした。
出来る事なら、学校を休んで、バイトも休んで、ずっと見ていたい気分でした。
でも、K先輩が「いいよ」と言っても、どこかいい加減な性格の先輩は気楽にそう言うけど。
けど、やっぱり学校のものだし。
早くK先輩に会いたいという気持ちも勿論ありました。
でも私は、早く返さないと部活の人に何か言われて、K先輩が困るんじゃないだろうか?という事の方が心配でした。

だから、朝、早く行く事にしました。
別に、お茶をしてくれなくてもいいのです。
K先輩が電車に乗る時間は、もう知ってました。何時に駅に来るのかも。
アルバムを返せれば、それで良かったのです。
いつもより30分以上早く、私はアルバムをもって家を出ました。
駅までのバスで座る事は出来ませんでしたが、物凄い重いハズのアルバムも、苦になりませんでした。
駅に着くと、改札を入り、改札が正面に見える場所で先輩を待ちました。
先輩、驚くかな?
私はそんな事を考えながら、ドキドキしながら人込みの中に先輩の姿を探しました。

10分ぐらい待ったでしょうか。
見慣れた歩き方で、K先輩が改札を抜けてきました。
目が合いました。

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