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人物紹介


バイト先にて
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高2の夏休みに入りました。
すっかり、ウェイトレスにも慣れ、バイト尽くしの夏休み。
7月の終わり頃、ふいにK先輩がバイト先に友達と来てくれました。

その頃、私はホールより調理場の手伝いの方が多く、K先輩が来た時に対応したのは、Rでした。
Rは調理場に戻ってきて、「亞乃、K先輩だと思うんだけど」と教えてくれました。
Rとは中学も一緒でしたが、K先輩の存在を知らなかったので
「亞乃、いますか?」
と聞かれた事で、ピンと来たそうです。
すぐにでも挨拶に行きたかったのですが、店長がなかなか私をホールに出してくれませんでした。

その店の店長は、その頃多分、30代半ばだったと思います。
背が低くギョロ目のその店長は、最初はとても親切な人に思えましたが、日が経つにつれ、だんだんと嫌味な人になっていきました。
最初の頃は、「疲れてるでしょ」と言って肩を揉んでくれる良い人に思えたものの、だんだんと調理場でお尻を触られるようになっていきました。
そうなると単なるセクハラです。
その頃にはまだセクハラなどという言葉自体が無く、コミュニケーションの一つと流していました。

何がきっかけなのかは、私には分かりませんが。
特にランチの混雑する時間帯に、私は厨房の手伝いばかりさせられました。
何か大変なへまをやった事も無く、ホールに出れるのはお客さんが少ない夜ばかりでした。
その店長は、忙しくなると大変不機嫌になり、ウェイトレスが注文を間違えた時などは、周りの物を蹴飛ばすなど、不機嫌を露にする人でした。
狭いキッチンでそのトバッチリを食うのがいつも私で、物凄く憂鬱になる事も多くなっていました。
もしかして、私は店長に嫌われて嫌がらせを受けているのでは?
そう思って、バイト先の先輩であり、唯一の男性であったAさんに相談した事もあります。
でも、答えは、
「逆に気に入ってるんだよ」
との事でした。
子供みたいな人だから、気に入った子は苛めたがると。
その答えに納得できるほど、私はまだ大人になってはいませんでしたが、我慢していました。

K先輩が来た時も、店長は嫌そうな表情をしました。
K先輩が来ても出て行けない状況で仕方なく洗い物などをしていると、オーダーが上がり
「持ってけば?」
と店長に言われました。
その言い方は、物凄く嫌味な感じでした。
気分が滅入りつつも、K先輩が来てくれた嬉しさと、緊張感で手足が震えました。

K先輩の席になんとかたどり着き、「お待たせしました」と平静を装いました。
K先輩は制服姿でした。

「最初に来た子ってさ、マネージャーやってた子だろ?」

K先輩にRの事を聞かれました。
Rは、中学の時、私ともK先輩とも違う運動部のマネージャーで、私たちとは接点はありませんでした。
そのRの事をK先輩が知っていた事に、少し驚きました。
「ああ、そうです・・」
と答えると、

「あ、こいつ。あの子と同じ部活だったんだよ」

と連れの男性を紹介されました。
そう言われてみれば、見たことがある同じ中学の先輩でした。
私はK先輩しか見てなかったので、すぐに気付かなかったのです。

すぐに戻らないと、また店長に何か言われるのを気にして、私はそのまま頭を下げて調理場に戻りました。
厨房に入ろうとすると、
「ホールに居たら?」
と店長に冷たく言われました。
厨房には代わりにRが入ってくれていました。

K先輩が店に居るということで、私は逆にホールに出辛くなりました。
自分がバイトをしている姿を見られるのが、なんだか恥ずかしかったのです。
その間にも、どんどんオーダーは上がってきて運ばなければなりません。
私は極力K先輩の方を見ないようにしながら、事務的に料理を運んだりし続けました。
K先輩の席の食後のコーヒーは、もう一人のバイトの子に頼み運んでもらいました。

そして、お会計の時になると、ランチ時にしては長居したK先輩達の他にお客さんも居なくなり、バイトの他の子も食事に入ってしまっていて、ホールには私一人になっていました。
レジを打ち、お釣りを渡す段階になって、K先輩の肩に私があげた巾着があるのに気付きました。
思わず「あ・・」と言うと、K先輩は

「これ、すっげー便利だよ。このポケット」

と言って笑ってくれました。
その時、厨房の出口から店長が店の入り口に向って歩いて来るのが見えました。
普段、そこから時間中に出てくる事など滅多にないその行為に、店長がわざとK先輩を見に来たような、嫌な感じがしました。
咄嗟に私は真顔に戻り、有難う御座いましたと言って、手を振ってくれるK先輩を見送りもせずに片付けに入りました。

その晩、私はK先輩にお礼の電話を掛けました。

「今日は、有難う御座いました。突然だったんでびっくりしました。」

と言うと、K先輩に

「いや、忙しい時だったみたいで、悪かったね」

と言われ、私は申し訳無い気持ちになりました。

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その時私は、「ああ、やっぱりなぁ・・・」と半ば諦めに似た気持ちになりました。
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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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