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人物紹介


理由
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Iちゃんが言うには、私が今井さんと帰った事が原因でした。
帰ったと言っても、少し送ってもらっただけで。
それも私が頼んだ訳でも無く、二人で姿をくらました訳でもなく、今井さんは皆の所に戻ったハズです。
私は、原因があるとしたらやっぱりそうだったのか・・・と思う反面、何故それでAちゃんが怒るのかさっぱり分かりませんでした。

「途中まで送ってもらっただけだよ?」

私がそう言うと、Iちゃんは難しい顔になり

「細かい事は分からないけどさ。J子が好きな相手だったから・・・」

と言いました。
私は、初めて知った事実に驚きました。

「え?・・・・知らなかった・・・・・」

そう言うと、Iちゃんは

「Aちゃんも、あの日知ったらしいんだけど。亞乃もそれ分かってただろうにって怒ってて・・・」

と言いました。
物凄い誤解だと思いました。
もしかして、J子がその話をAちゃんに言ったとき、私は側に居たのかもしれません。
でも、私の耳にその話は入っていませんでした。
ただ、そう言われてみればなんとなく。
他の子が今井さんの隣にJ子を行かせていたような・・・
目の端に映った光景を思い出しました。

「分かった。有難う」

私がそう言うと、Iちゃんは「ごめんねぇ」と言いました。

「いや、こっちこそ、嫌な思いさせてごめん」

と謝ると、

「Aちゃんも、そのうち機嫌直すと思うよ」

と言ってくれました。

理由を知り、物凄い誤解と勘違いだと分かっても、私はAちゃんに対し怒る気力が沸きませんでした。
確かに、私は浅はかな行動を取ってしまったのだと思ったのです。
もう少し。私が周りをよく見ていさえいれば、例えJ子からの話を聞いていなくても気付く事が出来たのかもしれません。
でも、いつも上の空のような状態だった私は、見ているのに見ていなかった。

私は、J子に申し訳なかったという気持ちで一杯になりました。
そして、何故、断ったにも関わらず、J子が私を強引に誘ったのかが分かったような気がしました。

普通なら、自分の好きな人を取られる可能性のある友達は、呼ばないはずです。
でも、好きな今井さんの機嫌を損ないたくなかったから、J子は執拗に私に参加して
くれと頼んだのでしょう。
最初から、きっと不安だったはずです。
それなのに、私と今井さんが一緒に並んで歩く後姿を見せられて、凄く嫌な思いをしたのだと思いました。

それからAちゃんのシカトが終る事もなく、すぐに夏休みに入りました。
夏休みに入って直ぐ。
近所に住んでいるJ子と、バッタリ会いました。
笑顔で声をかけてくれたJ子に、私は「何も知らなかったとは言え、ごめんね」と謝りました。
J子は

「気にしないでいいよー。」

と笑いながら言ってくれました。
そして、暇だったら家に来ない?と誘ってくれたので、そのままJ子の家に遊びに行きました。

J子の話によると。
出会ったときからJ子は、今井さんがすごく好きだったそうです。
でも、皆で会った数日後に、また「誰か紹介して」と言われ、自分に脈は無いと思ったそうです。
「確かに、写真を見せて亞乃を指名した時は、一瞬不安にもなったけど。」
「でも、亞乃がK先輩に夢中なの知ってたし。」
とJ子は言いました。
今井さんに私が好きな相手が居る事を教えたのは、Aちゃんだったそうです。
それに、実際に会った私があまりにも喋らないので、暗そうだと判断されたらしく、今井さんはすぐに私への興味を失ったようだと。
だから、送ると言い出した今井さんの行動は、相手が私だからという事でもないと思っていたそうです。
現に、花火の後。
今井さんは、同じ方向の別の子を家の近くまで送って行ったのだそうです。

「だから、亞乃は別に悪く無いし。ただ、Aちゃんが一人で怒ってるんだけど」

とJ子は言ってくれました。
私が今井さんに送ってもらった後、J子が気付いたら既にAちゃんは一人で怒っていたそうです。
「J子が可哀想だ」とAちゃんに言われ、自分を想ってくれてるんだなぁと思って、それ以上何も考えずにいたら、翌日からああなってしまって。
J子も困惑していたのだと話してくれました。

今思えば。
Aちゃんの怒りは、年頃特有の正義感ってヤツだったのかもしれません。
その頃のAちゃんは、クラスでも目立つ存在だったし。
仕方の無かった事なのでしょう。

その後、クラス替えの無かった3年生まで、Aちゃんと仲が戻る事もなく、会話も殆どした記憶はありません。
ただ、3年になって気が付いた時には、Aちゃんはその時クラスのリーダー的存在になっていたグループから言葉のいじめを受けていました。
理由は、私とは全く関係なく。彼女がきっと始めに目立ちすぎていたから・・・
卒業式の日。
クラスの子達に「なんか書いて」と私がまわしたアルバムには、

「亞乃。ごめんね。。。」

で始まるAちゃんの言葉があります。
私がアルバムを手渡して「書いて」と言った時、とても驚いた表情をしたAちゃんの顔が、今でも鮮明に思い出され、少し苦い後悔が残っています。


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