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人物紹介


家を抜け出して
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その夜。
私は家を抜け出し、公衆電話に向いました。
と言っても、時刻はまだ21時前だったと思います。
そんな時間に外へ出る事を親は許しません。
私のその頃の家は、親の部屋の横が階段でした。
その階段を、音がしないようにこっそりと降り、玄関ではなく両親の部屋の隣の和室の窓から外へ出ました。
K先輩に電話をかける為です。

私の家は、電話をするにしても、親に「電話貸して」と言わなければならない状態でした。
それが、まして夜20時以降ともなれば、親が許可してくれるはずもありません。
思えば、私は家から女友達と無駄話をするような電話をしたことが、高校を卒業するまで一度も無かったような気がします。

家を抜け出す事を思いついたのは、過去に姉がやっていたからです。
姉が、高校三年生の春のことでした。
姉の場合は、二階の屋根から木をつたって降りるという。それを何回繰り返したのかは分かりませんが。
私が襖だけで仕切られた隣の部屋にいて気付かなかったのですから、きっと夜中だったのでしょう。
でも、ある日。
朝になっても帰ってこなかった事で、親にバレました。
その朝、電話をかけてきた姉は、私に電話を代わって欲しいと親に頼み、私は姉にファイルを隠すように頼まれました。
それは、好きな人との文通のような内容のものでした。
夜中に抜け出して、姉は恋人のところへ行っていたようです。
その後、姉はその相手とすぐに結婚をして家を出ましたが。

姉のこと以来、両親は理解を示すどころか逆に厳しくなりました。
バイトにしても、姉もバイト禁止の私立でした。それが、親に嘘をついて部活だといい、それが後にバレました。
だから、私には余計に門限から何から全てにおいて、規制をかける状態になり。

そういう事に不自由は感じても、反発しようと思った事はありませんでした。
でも、好きな人が出来ると、そちらに向けられるパワーは凄いものでした。
恋が全て。
大袈裟かもしれませんが、そんな状態でした。

K先輩から電話が来るようになってから、一つ変った事があります。
子供だったとつくずつ思うのですが、私はその高2まで、夜8時に眠っていました。
それは、小さい頃からずっと変わらぬ習慣でした。
でも、K先輩が電話をかけてくるのは大概が20時半前後でした。
それから、眠いのを我慢して、来るか来ないかも分からない電話を待つ日が多くなりました。

その日、家を抜け出してまで電話をしに行ったのは、K先輩の誕生日がもうすぐだという理由でした。
理由というより口実。
朝会ってから、K先輩で頭がいっぱいだった私は、どうしても声が聞きたかったとうのが本音でしょう。
滅多に強く「こうしたい」と思う事が無かった分。
思った事は何が何でも実行しないと気が済まない性格でもありました。

暗い道を公衆電話まで走っている時、なんだか身体が宙に浮いているような。そんな感覚でした。
呼吸を整えてから、電話をかけると、出たのはどうやら御母さんでもなく。妹さんでもなく。お姉さんのようでした。
居るとは聞いていましたが、その存在に改めて驚きました。
お姉さんは、とても大人な落ち着いた声で応対してくれた後、いきなり人が変ったようにK先輩の名前を呼んでました。
そのギャップが、妙に面白いと思ったのを覚えています。

電話に出たK先輩は、私だと分かると驚いたようでした。
公衆電話からだと言うと、「大丈夫なの?」と心配してくれました。
私は、要件である

「もうすぐ誕生日ですよね?あの、今朝のお礼もしたいんで欲しいものありますか?」

と聞きました。

「今朝のお礼って、そんなんいいのに。」

K先輩はそう言ってくれましたが、私は過去に、プレゼントを貰って何のお返しもしなかった事を悔やんでいました。
だから、どうしても、何か上げたかったのです。

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その当時。
彼女からの手作りプレゼントとして持ち歩く男子高生が沢山いました。
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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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