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人物紹介


誕生日プレゼント
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翌日、バイトの前に早速布を買いに行きました。
前夜の電話で、「何色がいいですか?」と聞いたとき、K先輩は最初
「黒」
と答えました。
イメージに合いません。というより、私の記憶では好きな色は違ったはずで。
「え?本当に?」
と聞き返すと、
「何色でもいいんだけど・・・黄色かな」
と言い直しました。
それを聞いて、3年前と変わっていない事が、なんだか少し嬉しく感じました。

中学の頃、家庭科でエプロンやスカートを作らされた事がありました。
でも、私は決して上手とは言えず。というより、学校のミシンの台数には限りがあり、何故か私は友達に遠慮して自分も間に合わないのに譲っていたのです。
結果、作り上げる事もできず、散々な成績になりました。
それ以降、高校に入ってからは家庭科の授業も無く、ミシンを触った事すらありませんでした。
そんな自分の状態であるにも関わらず。
私が買ったものの中には、ファスナーが入っていました。
課題がスカートだった時に、一番難しく出来なかったのがファスナー付けでした。

材料選びは、とても楽しいものでした。
色んな生地を見ながら、K先輩が持つ姿を想像しました。
元々、物を作るのは好きで、そういう事に関しては凝り性でした。
どうせ作るなら、人とは少し違ったものを作りたかったのです。

取り掛かったのは、K先輩の誕生日の一週間前ぐらいでした。
親に学校の課題だと嘘をつき(親は授業に何があるかを把握していませんでした)、ミシンを借りました。
型紙などは使いませんでした。
自分の勘で布を切り、想像だけで縫い始めました。
余分な布を買わなかったので、殆ど一発勝負でした。
紐の通し方すら知らなかった状態で、2日がかりで形を作り上げました。
最後に、苦手なファスナー付けです。
無謀にも、ポケットを作ろうと考えたのです。

普通は、裏表を縫い付けてしまう前に、ポケットを作るべきだったのでしょうが、手順すら私は知りませんでした。
必要以上に苦労したのを覚えています。
今の私にそれを作れと言われたら、もしかしたら作れないかもしれません。
現に、K先輩への誕生日以来、今まで。私は巾着など作ったことはありません。
この先、無ければ。一生で最初で最後のことになります。

K先輩に渡せたのは、誕生日が過ぎた週末の事でした。
確か土曜日で、私はバイトを休み、学校帰りにK先輩と待ち合わせをしました。
その待ち合わせをする為の電話も、家を抜け出して公衆電話からかけました。

以前、マフラーを作って惨めな思いをした苦い記憶が、ほんの少し私には残っていました。
巾着は、自分でも驚くほど上手に出来ました。
学校で、友達に見せると皆誉めてくれました。
だから、少しだけ。私は前より気が楽な状態で、K先輩に会うことができました。

ファーストフード店に入り、K先輩にプレゼントを渡しました。
かなり、緊張しました。
自分の作ったものを好きな人に見られるということは、本当に勇気が居る事でした。
黄色と色を指定してもらったけれど、私が選んだのは、白と黄色の細かいチェックでした。
それを気に入ってもらえるかも、不安でした。

K先輩は、一目見て

「いいじゃん、いいじゃん」

と言ってくれました。
そして、私の苦心の作のポケットを見つけ、ファスナーを開けました。
そのときになって、私はポケットの中の処理をちゃんとしたかが不安になりました。


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嬉しいような困ったような、複雑な気持ちでした。
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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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