絡まる糸
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その後、しばらくはO君達と朝の電車で会う事がありました。 その度に、私は嫌な想いをしました。 私を見てそっぽを向くO君の変りに、他の男子校生が何やらヒソヒソ言いながら私を見るといった事があり、相当自分は嫌われたんだなと、その度に憂鬱な気分になりました。 そして、私たちが車両を替え、O君達が時間をずらした事で会う事は無くなりました。
変りに、時々、同じ中学だったO君達と同じ高校に通う二人の男子に会うようになりました。 一人は、部活も一緒だったクラスメイトのA君でした。 A君は、元々とても綺麗な顔立ちでしたが、高校に入って髪型も変り、とてもカッコ良くなっていました。 私が部活で嫌がらせを受けていた時も、卒業間際の時も、卒業した後で中学に同窓会として行った時にも、A君は何も変わりなく何かと話し掛けてくれる唯一の男子でした。 私は、彼を高校の部活で出会ったFちゃんに紹介する事にしました。
Fちゃんは、私服もかなりお洒落で、高一にしては大人びた子でした。 学校帰りに待ち合わせをして、二人を喫茶店で会わせました。 でも、数日後に朝の電車で、彼の方から無理だと言われました。 Fちゃんにそれを伝えると、彼女の方も気乗りしなかったと答えてくれました。 その後も、彼とは度々電車で会っていましたが、秋頃、パタリと姿を見なくなりました。
と、同時に。 もう一人の同じく中学が一緒だった男子、K君も見かけなくなりました。 K君は、中学でいわばツッパリとして目立っていた子でした。 高校に入っても同じようなスタイルで、電車で会うたび、いかつい目つきでしたが、私は中学3の時に彼と体育祭の応援団の時に接する機会があり、彼の優しい笑顔に惹かれたことがありました。 クラスメイトの中にも、恋愛というよりはファンとしてK君を好きな子が居て、ファンクラブなどを密かに作っていた事もありました。
偶然なのでしょうが。 A君とK君は、殆ど同じ時期にその高校を退学したのだと、社会人になってから知りました。 それを知った同じ頃、卒業後のFちゃんの噂も聞き、街でバッタリ再会しました。 私は、部活以外でFちゃんと殆ど接点がなく、卒業の頃には疎遠になっていました。 Fちゃんは、噂によるとその地元のヤクザの女になったとか。 街で出会ったFちゃんは、あまりにも雰囲気が変っていて、お互いに気付いていたにも関わらず、声を掛け合う事が出来ませんでした。 このFちゃんとは、それから10年以上経ってから、今度は病院のエレベーターで再会しました。 その時、側にいた男性がやはりヤクザっぽく、声を掛けることはお互いにしませんでした。
A君とK君が退学した事を知ったのは、就職した先で同期入社した彼らと同じ高校出身のSからでした。 A君は、学校に馴染まなかったらしく、出席日数も少なかったようでした。 浮いた存在だったので、いじめにも多少遭っていたとのことでした。
同じように。K君もいじめに遭っていたらしく。それで退学したという事でした。 K君の場合は、あのツッパリを通してたが為に、他の中学出身のグループに相当な暴行を受けたそうです。
しかも。その2人に対し。 いじめをしたグループの一人と、私は社会人になって会う事になったのです。 目の前で話している同期の男。Sがその張本人でした。
それから数年後に、また私は今度はそのSの話と、A君とK君のその後を知ることになりました。 やはり、同じ中学出身でA君K君と同じ高校に通っていた、Uからでした。 Uは、S達グループの酷いいじめや、A君がその後、地元から居なくなったこと。 K君は自分で商売を始めた事等を話してくれました。
SとUとの話は、高校卒業後のことになり、勿論中学の時も高校の時も接点が全くない相手でした。 このO君と同じ高校の男子と私はしばらく、何かと関わり続けることになります。
話が前後してしまうので、順を追って書いていきます。
O君との事が終わり、一ヶ月ほど経った頃。 今度は別の友達に頼まれて、やはりO君と同じ高校のI君に会いました。 O君との事があったので、あまり気乗りしませんでしたが、I君から頼まれたのだと、その子に懇願されました。
部活が無かった夏休みのある日。 地元の喫茶店で、その子とI君と3人で会いました。 それまで見かけた事はあっても、気にした事が無かったのですが、会ってみるとI君は、A君と似た雰囲気がある綺麗な顔立ちの男子でした。 とても落ち着いた大人びた雰囲気で、タバコを吸っていました。
私は一目ぼれをする性質ではありませんが、それでも惹かれるものがあり、緊張しました。 会話は、ほとんどポツリポツリ程度で、記憶がありません。 30分程度で、そのまま店を出て、別れたのだと思います。 その帰り道。 私は、見知らぬおじさんに声を掛けられました。 「ちょっと、エキストラで出てみない?」 いわゆるスカウトだったみたいです。 でも、私はそういう事を信用していなかったので、断って帰りました。 偶然、その夜、家に来た姉にその話をすると、そのおじさんは姉の顔見知りでした。 本当におじさんは映画監督で、撮影で側に来ていたということを知りました。
下らないけれど、スカウトされたのだということで、それまで全く自信が持てなかった私は、少しだけ自分の容姿に自信を持てた気がしました。 そして、今日会ったI君の事を考え、次に会ったらこの話をしてみようかなぁ。 などと考えるほど、浮かれていました。
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