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人物紹介


二度目のデート
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嘘をついた後味の悪い電話の翌朝。
いつものように駅に着くと、O君が後から走ってきました。
Rが遊びに来ていると嘘をついた翌朝です。

Rには、駅まで歩いてくる道の間に、正直に「Rの名前使っちゃった」と前夜の電話の事を話していましたが、それでも私は、内心ヒヤヒヤしました。
思わず、私に会う為に来てくれていると分かってはいても

「どうしたの?」

という言葉が後ろめたさから、つい出てしまいました。
O君は、

「いや、昨日、電話大丈夫だったかなぁって思ってさ」

と相変わらず爽やかな笑顔で答えました。
その頃、私はO君のこの笑顔と屈託の無さに触れるにつれ

O君を好きになれるかもしれない。

そんな事を考えるようになっていました。
心のどこかで、私はやっぱりK先輩が好きだった自分を捨てきれていなかったのだと思います。
K先輩と比べてしまえば、O君に対しては最初から同級生という意識があるので、余計に子供っぽく感じられました。

その朝、O君から次の日曜日に会えないか?という誘いを受けました。
私はその休日、両親とその知人の方と一緒に、海に行く予定がありました。
朝から出かけるので、昼過ぎに駅で待ち合わせをする事にしました。

私が中学3年の時、姉はもう家を出ていました。
前夜の電話で私は居ないハズの姉が電話を使うと、嘘をついていたのです。
姉は、やはり自分が学生の時に、親の厳しさで不自由な思いをしたのでしょう。
私の気持ちを察してくれました。
丁度、前の週末に私は姉の家に遊びに行っていたばかりでした。
私は、姉に買ってもらったばかりの洋服やバックがあったので、二度目のデートで服装に困ることが無く、それだけでも晴れ晴れとした軽い気持ちで待ち合わせに行く事が出来ました。

デート当日。
海から、待ち合わせの駅までは、かなりの距離がありました。歩いて30分はかかったと思います。
早めに着いた私は、それから20分ほど待ち、O君は10分遅れて来ました。

6月の終わりの、梅雨の合間の快晴の日で、待ち合わせの駅周辺は観光客が沢山居ました。

「どこ行こっか?」

会うとすぐにO君に聞かれました。
私も全く何も考えて居なかったので、そのまま私たちは行き先も決めずに混雑の中を歩き始めました。
その時点で、私は朝から数時間、海風に当たって居た事もあり、少し疲れていました。
本当なら、私からどこかの店でお茶でも・・と誘えば良かったのかもしれません。
でも、私にはその一言が言えませんでした。
自分から相手にお金を使わせるような事を言うのは、躊躇われました。
そのまま、繁華街を過ぎ、私たちは山道のハイキングコースへ歩いて行きました。

途中、O君は喉が渇いたと言って、自販機でジュースを買ってくれました。
自分でお金を払うというと、O君はこれぐらいいいよと断りました。
それを持ってハイキングコースの途中、今思えばとても景色の良い場所へ行きました。
今思えばというのは、その時の私には景色などどうでも良かったのだと思います。
私はO君の隣を歩いているという緊張感と、既に会ってから1時間近く歩いたので、ヘトヘトでした。
デートというだけで、今まで駅で話していた時と違い、私が意識しすぎているせいか、会話もなんだか弾みませんでした。

O君が座ろうかと言ったベンチは、木で出来ていて、私は服が汚れる事が気になりました。
そのまま、何も気にせず座ってしまったO君の手前、自分だけハンカチを出して敷く事は、なんだか出来ませんでした。
O君の横に並んで座るという事で、余計に緊張したせいか、喉がカラカラに乾いていたにも関わらず、私はジュースを半分も飲む事が出来ませんでした。

それから、またひたすら山道を歩き続けました。
途中、カップルに何組が擦れ違い、皆、楽しそうに彼に腕を絡ませて笑っていました。
私はそのカップル達を羨ましく思いました。
O君の一歩後ろを歩きながら、自然に出来ない自分にも嫌気がさしていました。
せっかくのデートなのに、全然楽しいと思えない自分が居ました。
あても無く歩き続けるだけのデートに、疲れ果てていました。

結局、私たちは3時間近く掛けて山から山を歩き続け、家の近くまで辿り着きました。
そこは、Rの家の近所でした。
「送るよ」と言ってくれたO君に対し、「Rのとこに寄って行くから」と嘘を付き、別れました。
気疲れと歩き疲れで、私はもう限界でした。
O君と一緒に居る事に、苦痛すら感じ初めて居ました。
そこから、家までの20分近い道のりを歩きながら私は、何かが違う。そんな感覚を持っていました。
上手く言葉で表現出来ないけれど、その感覚はO君と歩いている間中ありました。

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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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