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人物紹介


結局・・・
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私とA美は、待ち合わせをして登校しなくても、毎朝、お互いに決まった時間に家をでると丁度私が角を曲がるところで出会うので、一緒に登校することが多くありました。
A美がN君に告白をしたであろう翌朝は、終業式でした。
いつも通り家を出ると、やはり歩いてくるA美に会いました。

N君と付き合うことになって、きっとA美は上機嫌だろう。
私はそう思っていました。
が、出会ったA美の表情からは正反対に、不機嫌さが滲んでいました。
昨夜、A美に会った時のために、何を言えば良いかを一生懸命に思案していましたが、言葉をかけられる雰囲気ではありませんでした。
私は、勤めて明るく振舞い、わざとその話題に触れないように意味の無いお喋りをしました。

間もなく学校へ着くときになって、A美はふいに言いました。

「N君、私のことなんか好きじゃないじゃん」

一瞬、何のことだか訳が分かりませんでした。
「え?」と聞き返すとA美が続けて言いました。

「付き合う気無いってさ」

私は、自分の耳を疑い、思わず「どういうこと?」と聞き返してしまいました。
A美は、一瞬、私を睨むように見てから

「だから、フラれたんだって」

と吐き捨てるように言いました。
なんで?思わず聞き返しそうになりましたが、抑えました。
その代わり、私の口からは言い訳めいた言葉が出てきました。

「でも、N君、いいよって・・・。」

それ以上、言葉が続きませんでした。
もう、何を言っていいのか分からなくなっていました。

「聞き間違えたんじゃないの?」

A美の口調はきつく、かなり怒っているようでした。
私は嘘は言ってません。本当にちゃんと聞いたのです。
でも、あの電話のN君の答えとは裏腹に、A美は事実フラれたのです。
私が今更何をどう言おうが、それが現実で、信用してもらえる自信がなくなっていきました。

「ごめん。でも、聞いた事は本当なんだ。ごめんね。」

怒ったまま、口を開かなくなったA美の横で、私はひたすら謝るしかありませんでした。

A美がフラれたということは、私の中では想定していない事でした。
でも、ほんの少しだけ。本音を言えば、良かったと思っていたようにも思います。
自分が大好きな相手と、自分が付き合えなくてもいい。
だけど、もし誰かを彼が選ぶのだとしたら、私からみても納得のいく可愛い子にして欲しい。
そんな勝手な想いが、きっと心のどこかにあったのだと思います。

N君が、A美を振った理由は分かりません。
確かに私は「いいよ」という言葉を聞きました。
それは、肯定の意味の「いいよ」に私の耳には聞こえました。
でも、発音が少し違えば、確かに否定の意味である「いいよ」にもなります。
私は聞き間違えをしたのでしょうか?
あの電話の時、私は決して平常心とは言えない状態でした。
だからと言って、肝心の言葉の意味を取り違えるほどだったとは、あまり思えません。
それとも、私が心の中で「自分はフラれた方がいい」などと思っていた為に、勝手にN君の言葉の意味を、逆に思い込んでしまったとでもいうのでしょうか?

結局、訳が分からないまま、私はN君に真意を聞く事もなく冬休みに入りました。
それからは、それぞれが受験勉強で忙しく、部活で会う事も無いまま過ぎていきました。

2月に入り。
バレンタインがありましたが、その時、フラれたはずのF子が、N君にチョコを渡したという噂を聞いていました。
F子は、高校に入っても、ずっとN君が好きなままだったと、後で知ることになります。

みんなの受験が終った後、部活で送別会がありました。
A美は、N君に話し掛ける事は無く、私は私でわざと避けました。
そういえば。N君と私が目が合うとき、いつも彼は少し上目遣い気味でした。
下からちらっと私を見上げる。背が私より高い彼のそんな視線が、どういう意味だったのか、結局知ることはありませんでした。
そして、A美は最後の最後まで、私を怒っていたのだと思います。

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そう、言われ続けました。
卒業するまでN君が好きだった子は分からず、卒業以来、会った事もありません。
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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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