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人物紹介


勝ったのは・・・
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A美の提案に、私は「うん」とは言えませんでした。
N君を好きな気持ちは変っておらず、それどころか「もしかしたら」という可能性を感じていたのも事実です。

私たちは、その頃には受験勉強の追い込みにはいっていて、部活は出なくても良かったのですが、週に1-2回は出ていました。
勿論、それはN君が出ていたという理由もありました。
もしも、N君が本当に部活の誰かを好きであるならば、卒業までもう間が無いのだし、そろそろ彼から告白されてもおかしくないんじゃないか?と。
そんな風に考えると、F子にN君が言ったことは、やはりその場しのぎの嘘だったような気もしたのです。

私の中でN君が好きだという事が、イコール「付き合いたい」という状態にはなっていませんでした。
K先輩の時のように、きっと卒業したら終わりになるのだろうし。だったら、今のままで居た方がいい。
まして、受験を控えている時に振られたりするのは嫌だと思いました。

A美としては、私とは逆に。受験の前に、N君とのことをハッキリさせてしまいたかったのかもしれません。
彼女は成績の良い子だったので、私やN君よりも上の高校を受験することになっていました。
勿論、私とN君も別の高校を志望していましたが、N君は男子校を受験するらしいと聞いていて、それならば付き合いが続くだろうとA美は思っていたようでした。

私は、A美の押しの強さに、切羽詰ってしまったのでしょう。
A美に逆らいきれないと思い込み、次の日の夕方。
部活に行くとN君は来ていませんでした。
他の部活の子に下校したと聞き、一人でN君に電話をすることに決めました。
放課後の人気が少なくなった職員室の前にある公衆電話で、N君の家に電話をしました。

あの時、何をどう考えてあんな言い方をしたのか、今の私には分かりません。
ただただ、私はとにかく、A美が満足するようにとしか考えられなかったのかもしれません。
そこには、友情とかそんな感情は無かったのだと思います。

N君の声は、普段聞くよりも低く感じました。
先に出たのは母親で、多分、側に居たのでしょう。
少し喋り辛そうな雰囲気を感じました。
その時の私に、それを考慮する余裕など無く、いきなりN君に聞きました。

「あのさ、もし、A美がプレゼントくれたら受け取ってくれる?」

N君は、少し驚いたような雰囲気で「え?」と聞き返してきました。

「あのね。クリスマスにA美がプレゼント渡したいんだって。受け取ってもらえる?」

私は重ねて言いました。
N君は、少し沈黙した後、「うん」と返事をしました。
それを聞いて私は、やっぱりN君が好きなのは、私ではなくA美かもしれない。と感じました。
心臓がバクバク言い出し、泣き出しそうな自分を押さえ込みました。
そして、自分は振られたのだと思い込み、半ば自棄になったような気分で、更にN君に聞きました。

「じゃぁさ。A美が『付き合って』って言ったら、付き合ってくれる?」

自分でも可笑しな行動だと思います。
まるで、A美の恋の橋渡しをおせっかいにするかのような言葉が出てしまいました。
このとき、それでもその答えがNOであることを、ほんの少し期待していたのだと思います。
漫画のように、「俺が好きなのはお前だ」と言ってくれる展開を、頭の片隅で期待していたのかもしれません。
見方によっては、とても私の行動はずるいものだったのだと思います。
自分の気持ちを言わずに、N君の気持ちをA美を利用して探ったのです。

言った後に、すぐ後悔しました。
N君の無言でいることが、私を余計に後ろめたい気持ちにしました。
もういいや。そう言って今すぐ電話を切ろう。

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思わず、「え?」と聞き返してしまいましたが、答えは同じでした。
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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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