ライバル
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Kが、部活の道具を持ってきてくれました。 どうやら、私が部活を辞めると言ったのを聞いた顧問が、何があったんだ?と部員に尋ねたようでした。
Kにしても、ここまでの事になるとは思っていなかったようです。 私の存在が、なんだかおもしろくないという事から、ちょっと意地悪をしてやれ程度の気持ちで、最初はYのやる事に面白半分で乗っていた。 でも、徐々にエスカレートしていくYの嫌がらせは、自分の中の意地悪の限度を越えてきて。 最初は強気に反発しているように見えた私の表情が、さすがに辛そうになっていくのを見て、さすがに罪悪感が込み上げてきた。 だからといって、Yを止められるほど、Yに強く出る事は出来なかった。
実際にKがここまで言った訳ではありませんが、多分、こんな感じなんだろうと私は気付いていました。 元々、Kは物事をハッキリと言える、正義感の方が強いタイプの子でした。 少し、独特の雰囲気も持っていて、周りも、彼女に対しては気を遣っていました。 怒らせると怖いという意味では、YとKは同等で、2人に逆らうような子はいませんでした。 その2人に、A美は可愛がられていたという状態。 私から見て、YとKの性格は分かり易い単純さがあり、怖いと思ったことはありませんでした。 それに比べ、A美は、どこまで底があるのか分からない怖さがありました。
道具を持ってきてくれたKは、「ごめんね」と謝ってくれ、部活に出るように言ってくれました。 私の中で、それで何もかもスッキリした訳ではありませんでしたが、Kの好意を無駄にするのも悪いと思い、部活に出る事にしました。 今から考えると、かなりのお人好しな気がしますが、Kが間もなく転校することを知っていたのも理由でした。 それに、部活を辞めることは、Yの嫌がらせに負けた事になるし、なにより気になっているN君に会えなくなるのも残念だと思いました。
放課後になり、部室に行くとYが居ました。 Yの表情は、決して反省をしたというものではありませんでしたが、一応、謝罪めいた言葉を言ってくれました。 Y曰く、「ちょっとからかっただけなのにさぁ」だそうです。 Yは、いじめを楽しむタイプの子でした。 そして、Yを中心とする嫌がらせは、夏が終る頃まで続き、これをきっかけに終りました。
Yに乗せられ、男子部員も一緒になっていた中に、N君だけは入っていませんでした。 その間中、N君はK先輩の時と同じように、皆を制してくれていました。 それは、A美達女子部員の目には、「なんだか最近N君、怖くなってない?」という風に見えていたようで、そんな会話が部室でされていました。 N君は、私が嫌がらせをされていることに対し、「やめろ」などと具体的な言葉を言う事はありませんでした。 でも、私を気にかけてくれているようで、そういう時には必ずN君と目が合いました。 部活中だけではなく、下校する際にも、気付くとN君に見られていたということが、多くなりました。
嫌がらせが終っても、私はすぐに前のようになれる訳も無く、殆ど口を開きませんでした。 それに対し、気を使うようにKは何かと話し掛けてくれました。 Yは、元々あまり部活に出なかったのに、私に嫌がらせをしている間は楽しかったのでしょう。毎日来てました。 でも、それから間もなくKが転校をすると、部活には殆ど来なくなりました。 A美は、始終、何事も無かったかのように振舞っていましたが、あまり話をしていませんでした。 そして、YとKが居なくなると、徐々に会話が増えていきました。 でも、以前のように気安く話せる状態には、もう戻る事はなく、私はいつでも注意しながら言葉を選んで話すようになりました。
私とA美の共通の話題は、N君のことでした。 嫌がらせをされている間、私はN君への恋どころじゃない心境だったにも関わらず、A美は、ずっと私をライバルとして見ていたようでした。 それもあって、気に入らなかったのでしょう。だから嫌がらせを見て見ぬフリしていたのに、それは逆効果だったとA美は感じたようです。 N君が私を気にかけてくれて、私と目が合う回数が増えたように、A美もN君を見ていたのです。 A美の不満は、N君がなんだか私に対して優しく、好意を持ってるように見えるということでした。
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