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人物紹介


N君
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K先輩との恋が終って立ち直るのに、そんなに時間は掛かりませんでした。
振られたことに代わりは無いけど、嫌いな存在にはならず、憧れの先輩という形で私の心の中に残りました。

その少し後から、徐々に私は同じ部活の同級生。
N君の存在が気になるようになりました。
K先輩との事で、それを見ていた他の部活の男子が、事情を知ってか知らずかからかう事がありました。
それを「真面目に部活しろ」という言葉で止めてくれたのがN君でした。
そんな時にN君は、必ず私の目をちらっと見ました。
その行動が、私には庇ってくれているように思えたのです。

私は、相手が自分に好意があると勘付いてから、相手を好きになる。
K先輩の時と同じく、N君の場合も同じだったように思います。
ただ、K先輩の場合は告白をされたからでしたが、N君の場合は違いました。
N君は、後から思えば、誰にでも大概優しい人でした。
たまたま私が困っていたから助けた。その程度のことだったのだと思います。
だから、今回の場合は、半ば勘違いの片想いから始まりました。

それまで、背伸びをして、追いかけていたような状態だったK先輩と違い、同級生のN君は近い存在に感じました。
手を伸ばしたら届く距離にいる。そんな感じがしました。
毎日、部活で顔を合わせ、手合わせをすることもあります。
意識し出すと、不自然になる自分をなんとか抑え、平静を装っていましたが、N君への好き度は次第に高まっていきました。

梅雨に入って間もなくの頃だったと思います。
同じ部活のA美に、私がN君を好きだと言うことが、どっかからか伝わりました。
最初は「ふ〜ん」と言った反応だったA美が

「私も実はN君、いいなぁ〜って思ってるんだ」

と言い出したのは、それから数週間後のことでした。
私は、無邪気にも「いいよねぇ」とA美とN君の良さを共有するような会話をするようになりました。
A美をライバルだとか、そんな風に思いもしませんでした。
多分、私の中ではまだ「付き合いたい」とかそんなところまで、感情が発展していなかったのだと思います。
アイドルを見つけて、一緒にきゃぁきゃぁ騒いでる。そんな感じでした。

そんなある日。
私は、無用心なたった一言で、A美を怒らせてしまいました。
私はN君という共通の話題が出来て、どこかでA美との仲も深まってると勘違いしていたのだと思います。
だから、悪気が無い一言が、そんなことになるとは思いもしませんでした。
たった一言。
部活途中で、乱れたA美の髪型を、ちょっと笑って何か一言、言ってしまったのです。
具体的な言葉は、もう今は覚えていません。忘れたい出来事だったので。
ただ、言えるのは、他の友達同士であれば、そんな事にはならなかった程度だったということです。

それから、A美の態度は冷たくなりました。
と、同時に、その他の同じ部活の同級生も態度を変えました。
元々、A美が1年から仲良かったグループの中に、2年の途中から入っていった形だった私が、A美を傷つけたとしたら。
A美の一言で彼女達がA美を庇うのは当然の事でした。
彼女たちの中には、後から入ってきたのになまいきだ。
例え同級生であっても、部活では先輩である彼女達には、そんな感情が少なからずあったのだと思います。

その中に、いわゆる不良と言われる子が居ました。
その子は、なんとか組の娘でした。それだけで、怖がって近寄らない子も居ました。
学校はサボることが多かったようですが、部活にだけは遊びにくる事が結構ありました。
私にとっては、少し意地悪い程度なだけで、ただの部活の仲間の一人でした。
時々、彼女達と同じように1年から一緒の子が、その子に意地悪をされてるな・・・と思うことはありましたが、その矛先が向く事はありませんでした。
でも、それは、それまでは目をつけられていなかったから。
A美と私が通学を共にしていて、A美に嫌われていなかったから。
それだけの事でした。

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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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