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人物紹介


理由
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A美からの伝言で、別れを知ってから、私は何度かK先輩に電話しようと思いました。
悲しいとか悔しいとか、そんな感情の前に、「何で?」という想いが強かったのです。
K先輩に振られる原因は、いくらだって思いつきました。
話も出来ないような自分では、振られて当然。
高校生になって気持ちが変わったというのも納得出来ます。

でも、K先輩は卒業式の時も、あの時も、「連絡するから」と言ってくれました。
「待ってて」と言ってくれました。
思い出せば、K先輩はいつでも優しい声でした。
結局、K先輩が本当はどんな性格で、どんな人なのか知る事が出来ずにいたけれど、優しい人だということだけは、なんとなく嘘では無いと感じていました。
優しい人だから、私を必要以上に年下の子供に見ていたから、だから本当の気持ちを言う事が出来ずにいたのだろうか?
その優しさの結果は、返って残酷で、とてもズルい気もするけれど。
最後まで、私を傷つけたくなかったのかもしれない。

そんな事を日々繰返し考え、K先輩の気持ちを想像するだけで、本当の答えが分からないことが、何より苦しかったのです。
でも、振られた立場としては、電話をするのはしつこいと想われそうで、出来ませんでした。
そんな風に2週間過ぎた頃。
K先輩が、また、学校へ来ていました。

部活が終わり、皆が遊び始めた時、K先輩の姿が体育館の外に現れました。
私は、咄嗟に無視して、部室に逃げるように入ってしまいました。
一人先に着替えを済ませた私が、部室から出るに出られずに困っていると、A美が入ってきました。

「K先輩が呼んでるよ」

そう言われ、思わず

「なんで?」

とA美に聞いても仕方無いことを聞き返してしまいました。

「なんか、話があるって。外で待ってるから、早く行きな」

A美の少し強い口調に押されるように、私は部室を出ました。
体育館の出入り口を見回しましたが、姿は見えません。
本当の理由を聞きたくていたのに、いざとなると何をどう聞いて良いのか分かりませんでした。
一体、何を言われるんだろう?
怖さ半分、興味半分というような変な感覚で体育館を出て、そのまま校舎の方へ行こうとすると、後ろから名字を呼ばれました。
ビクっとして振り返ると、体育館脇の水飲み場の暗がりに、K先輩が居ました。

「あ・・・驚かせちゃった?ごめんな。」

私はいいえと首を振りながら、K先輩の側に行きました。
暗がりで、K先輩と一緒に居るというだけで、私はドキドキしました。
もう、振られてしまっているというのに、何かを期待するような自分が居ました。

「呼び出してごめん」

K先輩は、また謝りました。
私は、また声を出さずにいいえと首を振り、K先輩が何かを言いかけたとき、部活の男子がそこへやってきました。
私たちも驚きましたが、その男子も驚いたようで、まずい所へ来ちゃったというように、また体育館へ戻って行きました。
私は、振られる瞬間を人に見られたみたいで、すごく嫌な気分になりました。
そこで、K先輩が、外へ出ようと言ったので外へ出ました。

「この間は、ごめんな」

K先輩は、また謝りました。そんなに謝られても・・・と心の中で想いながら、私は首を振り、

「あの・・・A美から聞きましたから」

と言いました。
K先輩は、どうしてそうなったのかを、私が聞く前に話してくれました。

これからも、あの時点では付き合っていこうという気持ちはあったということ。
でも、私と下駄箱で話した後で、他の一緒に来てた友達に

「中学に彼女なんか置いてんなよっ」

と言われたこと。
それで、A美に「やっぱり付き合えない」と伝言を頼んだこと。

これが、K先輩の気持ちが変わった成り行きでした。
あれから、K先輩なりに考えてくれたことも聞きました。
私は、理由が分かって少し気分が晴れ、

「今日は、一人なんですか?」

と聞きました。
K先輩は、一人でした。わざわざ、私にそれを伝えるだけの為に、来てくれたようでした。
最後に先輩はもう一度、「本当に、ごめんな」と言いました。
私は、K先輩がきっと私の為に悩んでくれたのだろうと思い

「いえ。私、先輩に卒業式の日に振られると思ってたんです」

と、言いました。
前もって分かっていたことだから、もう、謝らないで、気にしないで下さい。
そういう気持ちで言いました。
そして最後に、「高校、頑張ってくださいね」と言って、その場を立ち去りました。

K先輩が、こうして来てくれたことで、私の中で、最後までK先輩は良い人になりました。
理由が人に言われたからであっても、それはそれで納得できるものでした。
K先輩に嫌われたわけではない。
それだけで、私は十分でした。
私のことを一生懸命考えてくれる人が居た。
それがどんな理由だろうと、それだけで、すごく幸せなんだと思いました。

こうして、K先輩との、私の初恋は終わった・・・・・

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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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