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人物紹介


バレンタイン
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K先輩に対する不安を抱えたまま、すぐバレンタイン・デーになりました。
私は、姉と手作りのチョコを作ることにしました。
ハート型の大きなチョコだったと思います。

そして、今回もまたもや、マフラーを渡すかどうか迷いました。
クリスマスに渡せなかったマフラーを、私は冬休みの間に一度ほどき、作り直していました。
あの時よりは、まともに出来上がっていました。
それでも自信が無く、ものすごい悩みました。

そして、バレンタイン当日。
私はマフラーとチョコを別々にラッピングして、学校へ持っていきました。
ギリギリまで、渡すかどうか迷っていたからです。
その時が来て、どうしてもダメだと思ったらチョコだけを渡せばいい。
そう思って別々にしました。

その日は、休み時間のたびに、廊下のあちこちでチョコを渡す子を見ました。
私は、先輩たちの教室まで行く勇気が持てずに居ました。
昼休みになり、下校をする先輩達の姿の中に、K先輩を見つけました。
友達数人と、追いかけっこのような事をして中庭を走り回っています。
もしかしたら、クリスマスの時と同じように、私を待っているのかも?と思いました。
側に一緒に居た友達が、「早く行きなっ」と私を突っつきました。
私がグズグズしていると、それを見ていたA美が突然、窓から

「Kせんぱ〜いっ!」

と叫んでしまいました。
当然、K先輩は呼ばれた窓の方を見上げました。
私は、咄嗟に隠れてしまいました。

「ほらほら、K先輩が見てるよっ」

A美にせっつかれ、仕方なく私は窓から顔を出しましたが、私が言った言葉は

「なんでもないです。すみませんっ」

でした。
A美が作ってくれたせっかくのチャンスでも、私には無理でした。
大勢の先輩方が居る中で、K先輩にチョコを手渡す勇気が私にはありませんでした。
K先輩はちょこっとだけ、不信そうな顔をし、しばらくすると帰って行きました。
その手には、カバンの他に紙袋を持っていました。
きっと、他の女の先輩たちからチョコを貰ったのでしょう。
私はその姿を、窓から複雑な気持ちで見送りました。

そして、部活が終った放課後。
私はA美に付き合ってもらい、K先輩の家へ向いました。
バレンタイン当日に渡せなかったら、また私はプレゼントを渡す事無く自分で食べてしまったでしょう。
私の家は学校を出て左へ。K先輩の家へは正反対の右へ行った方向にありました。
私があまり知らない道です。この道をK先輩が歩いている。そう思うだけでなんだか嬉しくもありました。
せめて、家の方角だけでも一緒だったら、もう少し私たちの距離は縮まっていたのかもしれません。

K先輩の家は、同じ部活の友達の家の近所でした。
その子に教えてもらい、K先輩の家の前に着いた時には、心臓が破裂するかと思うほど緊張していました。
K先輩の家は、玄関の前に階段がありました。たった3-4段の階段でしたが、足が震えて思うように上がれませんでした。
ポストに入れて逃げ帰ろうかと一瞬考えましたが、A美に背中を押されました。
寒さもあったのでしょうが、私は歯がガチガチ言うほど震えている手で、チャイムを押しました。

元気な「は〜いっ」という声が聞こえ、出てきたのは妹さんでした。
私は、フルネームで先輩の名前を言い、いらっしゃいますか?と聞きました。
妹さんは一旦、軽く戸を閉めて、

「おにいちゃ〜んっ 女の人が来てるよっ」

とK先輩を呼びました。
少しして階段を下りる音がしてK先輩が玄関の扉を開けました。
確か、ジャージ姿だったと思います。
K先輩は、私が居るとは思っていなかったのでしょう。かなり、驚いた表情でした。
その表情を一瞬だけ見た後、下を向いたまま

「これ、バレンタインなんで・・・」

とプレゼントの入った袋を手渡しました。
その中には、マフラーも入っていました。
私の頭はパニック状態だったので、マフラーを上げるかどうか迷っていた事すら忘れていたのです。
K先輩は、袋を受け取り

「ありがとう。一人?」

と聞きました。
私は、「A美と一緒なんです」と答えると、そのまま頭を下げて転びそうになりながら階段を下りていきました。
A美に、「K先輩が見てるよ」と言われ、玄関を振り返るとK先輩が見送ってくれてました。
私は、再び頭を下げると、A美の手をぐんぐん引っ張って、急いでその場を立ち去りました。

帰り道、A美に「K先輩、なんて言ってた?」と聞かれました。

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そう言われてみたら、そうかもしれません。
一緒に二人で歩いたことすら無かったので、チャンスだったのかもしれません。
少しだけ、惜しい事をしたような気がしました。
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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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