プレゼント
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(昨日の日記にクリスマスイブの土曜日だったと書きましたが、23日の終業式の日のことでした。)
K先輩に渡せなかったお菓子を食べきって、ボーっとしていると、玄関のチャイムが鳴りました。 扉を開けると、そこにはK先輩が居たのです。 私が、驚いて声も出せずにいると、K先輩は袋を差し出します。
「これ、クリスマスだから・・・」
K先輩が学校に遅くまで残っていたのは、やはり私を待っていたようでした。 私が先輩から隠れて会おうとしなかったので、わざわざ家まで持ってきてくれたのです。
「あ・・・有難う御座います。」
私は、かすれた声でお礼を言い、プレゼントを受け取りました。 心の中はパニック状態で、かなり焦ってしまっていました。 そして、またもやトンチンカンな余計な事を私は口走りました。
「あの・・・プレゼント用意してたんですけど、渡せなくて・・・」
その場で、そう言うからには、自宅に来てくれた先輩に渡すべきだったのです。 でも、私は、その前に全部食べてしまっていたし、マフラーは包装もせずに放置していたので渡せるはずもありません。
K先輩も、かなり緊張している様子でした。 私の訳の分からない言い訳など、耳に入っていないような感じでペコリと頭を下げると、そのまま玄関から立ち去って行きました。
私は、放心状態のまま玄関を閉め、今のは夢じゃないだろうか?としばしその場に立ち尽くしていました。 多分、1-2分程度の事だったとは思うのです。 急に我に帰り、慌てて玄関から外に出て、先輩の姿を探しました。 K先輩が帰ったはずの方向を見ましたが、姿はありませんでした。
家に入ると、私は途端に恥ずかしさが込み上げました。 自分がプレゼントを渡させかった事は勿論そうですが、その時の服装が部屋着だったからです。 上着のポケットの端が破れているような、あまり人には見られたくない服装でした。 その姿で、K先輩の前に立ったかと思うと、普段、学校へ行く時に綺麗にしていたのが全て台無しになった気分でした。
さらに、時間が経って気づいた事は。 その頃、私の家はバス停のすぐ側にありました。 K先輩の家から私の家までは、歩くと相当な距離があります。 きっとバスで来たに違いない。 私は慌てていた為に、K先輩は歩いてきたと勝手に思い込みバス停を見ませんでした。 そのバス停の影に、K先輩はまだ居た可能性があったのです。 玄関先だけなら、K先輩は私の全身を見なかったかもしれないけれど、外にでた無防備な私を、K先輩は見ていたかもしれないのです。 考えれば考えるほど、その可能性がすごく高い気がしました。
K先輩が来てから間もなくして、両親が帰ってきました。 バス停に居たとしたら、私の両親もK先輩は見たのだと思います。 それも、なんだか恥ずかしいと思いました。 両親が帰ってくると、夕飯の手伝いでバタバタと時間が過ぎ、やっと落ち着いたのは夕食後でした。
その頃になると、全てが夢だったような気持ちになっていました。 でも、現実に目の前にプレゼントがあります。 やっと、私は嬉しさが込み上げてきました。 と同時に、K先輩は、どうして私の家を知ってたんだろう?という疑問が出てきました。 私の部活の女の先輩の中に、姉の友達の妹が居ました。 知っているとすれば、彼女しか思いつきません。 K先輩が、わざわざその女の先輩に私の家の場所を聞いてくれたのかと思うと、ますます私は嬉しさが込み上げました。
それまで、なんだか「付き合ってる」という事に実感が無かったのですが、このとき初めて、自分はK先輩の彼女なんだなぁ・・・と思いました。 そして、男性に想われる幸せのようなものを知った気がしました。
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