A美
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A美の「なにそれ?」という言葉に、私はどこかで女の怖さを知った気がしました。 元々、小さい時から男子の中で遊ぶことの方が多く、「女の子同士の会話」みたいなものからは外れていました。 小学校を高学年で転校し、違う学校に行って初めて、自分が同学年の中でも幼いということに気付きました。
転校した学校でまず気付いたのは、大袈裟に言えば貧富の差。 その小学校は、上に高級住宅地街があり、そこから通ってくる一般的にお金持の子供。 下には昔からの古い町があり、貸家やアパート住まいの子供。 それプラス、親の職業などによっても、立場が分かれていました。 きっと、親がそういう事を言うのでしょう。子供が同じ感覚を既に持っていたのです。 聞かれて驚いたのは、「部屋はいくつある?」という質問でした。 部屋の数によって、その子の家がお金持ちかそうでないか・・・ 他にも、有名進学塾がいくつかあり、そこへ通っている子同士の間では、もろにライバル心剥き出しでした。
服装一つでも、何かと言われることになりました。 ある日、私はワンピースを着て学校に行きました。 たまたま、その日は小学校の卒アルを撮る日でした。そのことは、多分、クラスの殆どが当日まで知りませんでした。 その頃、家が近所で仲の良い友達がいて、その子に言われました。
「卒アル撮るからって、いい服着てきてさっ」
その子は、確かに普段と変わり無いTシャツにスカートという服装でした。 でも、私としても、そのワンピースは着回ししている服の一つで何も意識が無かったのです。 先生にしてみれば、普段の生活としてアルバムを作るのが狙いで、あえて言わなかったのでしょう。 私は、こんな事でも友達を怒らせてしまうことがあるんだ?とかなり驚いたものです。
きっと、転校前の小学校にもそういう事はあったのでしょう。 でも、私は気付かずに、いつも男の子と追いかけっこをしているような、良く言えば無邪気な子供のままでした。
そんな雰囲気の学校の中で、私は「女特有の感情」というものがあるということを知りました。 意地の悪さとか、嫉妬とか。 言葉使い一つで、一人の女の子を敵にまわしてしまたが為に、集団で意地悪をされるというような状況は、よくある事でした。 その女の子が人気がある(力がある)場合、それは男子にまで影響力を及ぼしました。 たった一人の女の子の機嫌を損ねただけで、クラス中、部活中の数人から嫌がらせを受けることになるのです。
A美は、クラスでも頭が良く面白いということで人気者でした。 勿論、部活でも同じ。 住んでいる地域は私と同じでしたが、彼女の両親は教育委員で家も比較的新しい綺麗な一戸建てでした。 その頃の私は、5部屋ほどある家に住んではいましたが、そこは貸家でした。 しかも、成績は中程度。目立つ同級生と仲が良いわけでもなく地味な存在でした。 かと言って、いわゆる「いじめ」にあったことはなく。 中1の時までは背も小さく、クラスの女の子は妹のように接してくれていました。
私がその運動部に入ったのは、中2からでした。 A美たちは中1から初めていて、私が入った時には既に仲良しグループは出来上がっていました。 その中に、私はクラスメイトのA美がいる事から、入っていく事になったのです。
K先輩と「両想い」となり付き合いだしたという話は、A美を通じて部活中の誰もが知る事となりました。勿論、クラス中にも。 そして、K先輩を通じて、やはり同じ部活の先輩にも、先輩の同級生にも知れ渡る事になり、廊下で擦れ違うだけで私は視線を感じるようになりました。 A美は、時には親切に。時にはからかうように、私とK先輩の話を聞いてくれましが、それはあくまでも野次馬的で、私は相談事を彼女にすることはありませんでした。
後に、私はA美とそのグループからいじめを受けることになります。
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