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人物紹介


呼び出し
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「俺はお前が可愛いって言ったんだけどな。そしたら、あいつらエーーっとか言いやがって」

K先輩は、真顔で私に言いました。
これは喜ぶべきなのか、それとも照れていいものなのか。
今の私であれば、何言ってんのっ!などと笑えますが、まだその頃の私にはそんな対応の仕方は思いつきませんでした。

中学の頃の一つ上は、大人になっての5歳とか10歳上と同じぐらいの感覚があります。
たった一学年上というだけで、まるで自分とは違う大人な感じがしたものです。

ここでも、今思えば疎い私は、それがどういう意味であるのかすら気づく事はありませんでした。
反応に困り、一瞬固まったまま、ただ意味不明のへらへら笑いをしただけだったと思います。
でも、この日以降、私は少しK先輩を意識するようになりました。
今までは、たまに遊びにくる可笑しな先輩というだけであり、特別な感情は全くありませんでした。
でも、意識してK先輩の存在を気にするようになると、彼の視線が自分を追っている事が多いことに気付きました。

可笑しなもので、「見られてる」と分かると、自然な自分の動きができなくなり、
大して面白くも無いのに笑顔を作り、つまらないわけでもないのに、仏頂面になってみたり。
K先輩が見てる時は、いつも一人芝居をしているような状態でした。
そう、後から思えばそれは、ぶりぶりのアイドル歌手が、ファンを意識してステージに立っているような・・・そんな心持に似てた気がします。

それから数日して。
授業が終わり、掃除当番をしていると同じ部活のクラスメイトに

「K先輩が、屋上の階段で待ってるから来てって」

と言われました。
どうやら、K先輩とたまたま廊下で会った時に、伝言を頼まれたようです。

いくら疎い私であっても、その「呼び出し」が何であるかぐらいは分かりました。
でも、私の気持ちは、意識し始めたとは言え、相手が自分を好きかもしれないというだけ意識であり、まだまだ恋愛感情に繋がるものではなかったのです。

友達にはやしたてられ、気持ちの整理もつかぬまま、私は先輩の待つ屋上への階段を上り始めました。

その階段には、普段、あまり使用されない体育の授業の道具が沢山置かれていました。
それを超えなければ、K先輩が居る屋上の扉には、辿り付きません。
上からK先輩が見下ろしているため、意識しすぎて私の体はますますガチガチになりました。
無様な格好を見せなくなかったし、早く話を終らせて帰りたい一心でした。

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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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