古びた青いシートの座席に座り込んで かたほうの端で きえてなくなりたいとわたしが泣き
もうかたほうの端で きえてなくなってしまったあのひとがいて なくなりたくなかったと
泣く
泣きながら、そのことを知っている 薄く細く けれど確かな境界線で ぼくたちがくっきりと別けられていることを つねにきちんと感じながら
誘う手は内側からのびてくる のびて、のびて、 届きはせず はねかえされる言葉とまなざしを 食べ物にしてふいに生長するあおじろい手が ふらふらと
憎んではいけないとすべてのものが大声で言う おまえの怒りは不当だとすべてのものが投げ返す 列車は、夜のなかを走るので ぼくはただ 暗がりへの段をひとつ踏み外し ただしく間違った自分の上を きちんとスピードをあげて 走っていく
(いらないのはぼくです) (……でも)
……あの白樺林はまるで骨のように見えますね ええそうです 寒さと雪に白く白くみがかれて 枝の何本かを打ち落とされた地面の骨です そうしてすぐに緑に芽吹くだろう無数の骨の林
叶うことなら 野生の木になれ
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