あおいそらで あんまりに あおいそらで
あかるいのが目にしみてぼろぼろと涙が止まらない これは別にアレルギーなどとはちがうと思う あんまりにまぶしいそこだから、ただただ 射抜かれた目が逃げたがっているだけなのだと
昨日の夜にはりついていたまるい月が あんまりに曇りなくしろかったこと まっさらの銀のコインのように薄くひらたく ぴかぴかとビルの上に置かれていたこと 今のこの昼に思い出すと それはなんだか 贋物の記憶のように思えるくらい 鮮明なひとつの映像だった
ぼくはこのつよいひかりにうたれてまるでひとつの彫像になる うつぶせたまぶたのすきまからも漏れてくる、ひるま 明るすぎるような朝
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鼻炎もともかく全身反応、 熱っぽいのと炎症がおさまらないのと そんなことをがんばらなくてもいいのにな スギ花粉に反応はえられなかったくせに それでもきちんと症状は悪化たどり中 どうやらもう、今日はお薬がまにあわない日です 病院はお休み、 わずかな爆弾をいくつも抱えている気分 いつはじけとぶかわからなくて、ただただ 息を殺して自分の体内うかがっているような そんな気分
睡眠サイクルがめちゃくちゃなのをコントロールできない 欲しいのは熟睡感というやつ、 ほんとうにたいせつなのにね 小刻みなふるえる眠りはあんまりからだをやすめてくれないこと くりかえし人に説明するのに少し疲れたので もう笑ってそうですねと言います
ひとりにて通院という世間の時間に じぶんをあわせてゆくことができない 手伝ってくれる人をつのったらいいのに 助けてということを ぼくはしらなかった 知らないままで こんなところにいる
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発作……の程度がすこしずつ進んでゆくのです そうしてなんだか、範囲が広がってゆくのです 広がっていくんです どこに行くのか見えてこないまんま反応だけ強くなる たくさんのものへの拒否をしめす身体 ……ふあん、です だけどそれを、その怖さをきみに言うことばの持ち合わせがなくて みつけられなくて また笑ってすませてしまった 歪んだ笑いでとりなして ひとりで居ることのほうへ 流れてしまった
……たとえばあなたに気をつけてねとうるさいくらいくりかえしてしまうのも たぶん こんな感覚から出ているんだと思います ひとりぼっちが好きなわけじゃなく、ただ ひとりでいることのほうを学んできたように見えて ほかのことを 学ばないうちにただそればかり 上手になりすぎてしまった
ぶりかえしの発作 ぼくがぼくをみうしなう たぶん ただ外からの刺激を受け入れられないだけなんだと思う 物音や振動やランダムな騒音や においや、ひかりや ……ごめんなさい 意識を手放して なんとかなろうとする機構がまた やってきてしまった 取り落とした自分をみつけられないまま ただ悪寒だけ強まっていく
現実感すっぱりと殺ぎ落としたついでに足元もなくなり 麻痺したみたいに下半身の感覚をなくす ひとりで歩くと言うことができなくなる 居ながらにして迷子になりました ごはん食べながら くずれていって ただふつうに座っているだけなのに くずれていって きみの温かさくらいにすがって あるいは まっすぐにひっぱった傷の痛みにすがって コルクボードに虫ピンで止められた蝶の羽、蟲の胴体
ここはなんだろう ぼくはどこだろう どこにいるんだろう 分厚いビニル袋につつまれて 世界中が とおくなる 陽炎みたいにゆらゆらと こころもとなく 存在感が、きえてしまった
おひさまのしたに 出てきてしまった幽霊は、いったいどれくらい 自分のことを場違いだと感じることができるんだろう いったいどれだけ 影が薄まるそのすがたを 信じることができるんだろう
………。
「出口がどこにあるかおしえて、どこに行けばいいのかおしえて、
ひとりにしないで ひとりにしないで」
3月26日、昼
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