『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2004年02月14日(土) 花ひとひらの雪

海辺にある町に住んでいる
生まれたときからずっとここにいる
高校生になるまでわたしはひとりでこの街を出たことがなかった
最初にひとりで電車に乗ったのは高校を卒業したときで
わたしはそれから七年間、ひとりで電車に乗っていた
そうして今
ひとりで家の外に出ることはわたしにはとてもこわい

たとえばうしろから羽交い絞めにされて
我知らぬものに轢き殺されてしまうように
くだかれて粉々になって無に帰すように

死ぬということばが巷にあふれている
わたしはそんなことばほしくない
ましてや
身近にそんなことも、もう
ほしくない

それでも近づいてくるものがあるからわたしはここに精一杯たちつくして
容赦ないそのことばの殴打に耐えられるだけのじぶんをつくりあげなければ
いけない、と思う
これから、わたしが
生きていこうとするなら

この街を出て行って、わたしは
かんたんに人に「死ね」ということばを
ぶつけるひとがいることを知った
それを冗談だと受け取れるようになるのがおとななら
わたしは一生
おとなになんてなれなくてもいいと思った

・・・・どんなに抗ってもひとはいつか
   かならずいなくなります
   ここから

悟っているわけじゃない
悟れるわけなんかない
菜の花を見ると、思い出す
れんげの花畑、うすあおい空、まぶしすぎた夕焼け、
途中でつっかえたピアノの音、
だれかの笑顔
花ひらくような笑顔、たくさんのうた
とうめいなうたごえ、
くしゃくしゃにこみあげてきて
それでも流れ出してこない、
なみだ。

そうしてティルナ・ノーグ、さんざしの花さく、永遠の二月の丘

そういったなにもかもを胸にしまって
わたしは、生きていることを、選んでいるから
叫びたいのをこらえてふとんをかぶって
涙が出なくてころげまわって
かわりに腕に突き刺した鋏の跡は
左腕のてくびにめちゃくちゃな線を描いて
でもだれもそんなこと望んではいないとわかっていても
それでも苦しかった「あたし」の
なみだのかわりに
どろどろと腕をつたってながれた血で
枕が濡れた

病気ではかたづかないじかん、薬ではやわらげられない痛み
いつかたくさんの時間がわたしの中をとおりすぎていって
やさしいものだけを後に残してくれるかもしれないけれど

何度、くりかえしても
きっと慣れることなんてないのだと
教えてもらった
くりかえし
早すぎる、さようなら

わたしはまだ、
泣くことができないで
雪の季節だけれど
この海辺の街にはその影もなくて

たとえば立ち去っていった人たちのことを思う
それでも死と生のあいだでわたしが揺れる
こんなばかなわたしでごめんなさいと思う
傷だらけの腕はそこにゆきたいから作ったのではないよ
ただ、わたしがここにいることを
自分に思い知らせるためにつくった傷だよ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


できることなら
たとえば50年後
桜の花びらが降りしきっているその下で
いつかあなたに会いたい

だれにも平等にやってくる、歩道橋にスプレーで殴り書きされた
その「死」ということばを越えた先で
過去形で語れないわたしが
ひとつきり、今こころから言えること


Happy Valentine’s Day
だいすきな、あなたへ



2月14日、深夜 真火


 < キノウ  もくじ  あさって >


真火 [MAIL]

My追加