『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2003年11月10日(月) 挑みかかる

雨の新宿というところをひとりで歩いた
自分が一人じゃ何もできないわけではないことを
証明したくて
雨の新宿というところをひとりで歩いた

通勤時間がすぎていて、そうして雨がふっていて
買い物にはまだ少しはやい新宿は思いのほか
誰もいなかった
ひとより多いかもしれない鳩がばさばさと頭の上に飛び立ったのを
こうべをぐるりとまわしてみおくった

みおくるわたし
みおくるわたし

いつもあなたをみおくるように
いつもだれもをみおくるように

うすあかるいひるまの中にたのしいと感ずることをさがしたく
わたしはひとりでふらふらと歩いた
ほら、あなたの手がなくてもわたしはひとりで歩けるよ
そう言いたくてショルダーバッグをかかえて歩いていた

シャーリーテンプルを見つけた
大好きなお茶のお店を見つけた
ジェーンマープルに立ち寄った

たのしい
が、
見えない

たくさんの布を前にしてこころが浮き立つはずなのに
どうしてわたしはこんなふうに
死んだ魚みたいな目をしてここに佇んでいるんだろう
どうしてわたしはここにいなくちゃいけないんだろう
カンヅメの果物みたいにシロップの中に沈殿していて
心の芯までしずかに甘いのにさびしくてつめたいのだ

元気をくれるもとをさがしまわるより先に
元気を生み出すなにかがわたしの中に欠けていて
こなごなのかけらさえもよくわからないのかもしれなくて

くたびれ果てたわたしが家に帰りつき
ただ咀嚼するだけになってしまった「ごはん」を口に入れる
すこしずつ削り落とされるように痩せていくのだけど
それも気にならず、ただ眠りたくていつまでも眠りたくて
ひるまに見かけたコルセットが頭に思い浮かんだ
あの中にすっぽりとおさまってきつくからだを縛り上げてやりたい

目を醒ましたくないのに
明日なんか欲しくないのに
夜中に目をさましてしまったわたしに
死にたいがまたうしろからそっと寄って来て
にっこりと親しげに微笑んでみせた



11月10日、深夜 真火


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