| 2003年10月14日(火) |
紙くずになるわたしの家出 |
半泣きになりながら電車に乗って2時間半、 うちでは、ないところで、わたしがことばを書いている 本日、二日目の夜あるいは三日目の朝。
好きでうちを出たのでもなく、電車に乗ったのでもなく ただ、築17年経った我が家のリフォームが始まって たった、お風呂を取り壊してユニットバスに取り替えるだけのそれだけの改築なのだけど ただ、それだけなのだけど
ただ一日、お風呂の湯船に浸かって水分をからだにしみこませる そのことができなかっただけで、わたしのからだがこれもまたあっさりと 悲鳴をあげてしまっただけ。腫れ上がってひりひり痛む顔と腕と身体と。
そうして
知らない人が頻繁に出入りするその慌ただしさと 取り壊されていく家の一部が出す悲鳴みたいな轟音と ひっきりなしに続くたくさんの知らない物音に わたしのこころがあっさり参ってしまっただけ。 ほんの二年勤めさせてもらっていた図書館にて学びとったらしい やってくる業者さんに笑顔できちっと応対することを覚えたからだが 知らない人がすぐそこに居るという緊張感であふれながら いざ、というときに備えてスタンバイしてる。 にっこり笑って挨拶ができるように ただ一つの世間話でも 気持ちよく、なめらかに、その時間がすすんでいくように ひたひたと緊張はたまっていって そうして、業者さんがいなくなったあと わたしがこわれる
めちゃくちゃなことば 意味のないなみだ 自傷はつづいて 時間だけながれた
耐えられない耐えられない耐えられないでも我慢しなくちゃ我慢しなくちゃ頑張らなくちゃ
わたしがこわれて 紙くずになって くしゃくしゃになって 窓から捨てられる それをわたしはぼんやりみている うつろな手で そこらじゅうに転がっていったわたしを取り上げて ぐしゃぐしゃに丸めながら わたしがみている
苦しかったから血を出したの 苦しかったからお薬に頼ったの でも なんにも減らなかったの ただくるしいということばの山が 少しずつ大きくなっただけで
……毎日、毎日、唐突にぼろぼろと泣き出す25歳の小娘をみて 理屈の通らないことを口走って自分を殴りつける小娘をみて ……うちをでていなさいと、 家人のだれもが 言った
だからわたしはいまここにいて こんなところで 慣れないパソコンからそれでもことばを綴ってる パソコンを貸してくれたひとは隣で寝息を立てていて うまく眠りにつけないわたしは また、新しい明日のことを思って どこかひどく、怯えていたりするんです
こんなに親切にしてもらっているのに その気遣いに応えられないじぶんが なんでこんなに我が儘なんだろうって また、価値のない方向に一度かたむき だけど、わたしは明日を迎えなくちゃいけないんだと ふらふらとバランスをたもっている。
小さいころつくった、不格好な、どんぐりのやじろべえ 右と左のどんぐりはどうしたって不揃いな大きさで とてもとても頼りないちいさなバランスをちいさな指が つくろうとして四苦八苦していたんだったよ
いちどでもつくれたこと、あったのかな どんぐりでできた、やじろべえ ばらばらころころと椎の実の落ちてくる道路のなかで 地面に目を凝らしながら、ゆっくりと還っていく 指先の記憶、夢みたいな視野のなかで わたしのはらっぱ、と呼んでいた空き地のこと ちっぽけでしかたなかった、でもきっと嘘なんかじゃなかった お日さまに満ちていた時間のこと
いつかあそこにかえるまで わたしはこの怯えと 闘ってゆかなくちゃ、いけないんだ いけないんだよ
言い聞かせる夜は、つづきます
10月15日、未明 真火
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