『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2003年01月19日(日) 方位磁針

からだのなかに
いつもぐらつかない羅針盤があったらいいのに、
と、思う。
いつだって、ノース・ポールとサウス・ポールをまっすぐに指して
一直線に貫かれている、
ゆらがない方位磁石。
こころがよわくなっても
からだがこわれても
ただ
あなたという一点を指向しつづけることを迷わなくていいように
どっちへ行ったらいいのか、
何をしたらいいのか、
皆目見当がつかない灰色の薄闇みたいななかに紛れ込んでしまっても
(あきれるほどそれはたやすいことだから)
その手ごたえのなさに弱りきってしまわないように。


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花畑のなかにいる夢をみた。
それは、早すぎるいちめんに黄色い菜の花の畑で、
わたしはそのなかに分け入って
黄色の小さな花びらと花粉とにまみれて
まぶしいくらいに黄色いからだになってしまったのだった。
それから鋏を手にして一本一本、左手にたばねていった
ささやかな花束。
細いさみどりいろの茎の先で枝分かれした小さな小さな星屑みたいな白い花、
韮の花。それに青緑のフェンスの向こうで花開いたちいさなやわらかく白い水仙。
手が届かない花、
季節をこえて立ち会ってくれた花。
それをあなたにあげたかった。
ぜんぶあなたにあげたかった。

どこまでも
やさしくてつよくて
まぶしくて
あたたかくて
野生の花

夢の中でわたしはサトくんにあげるための花を左手ににぎりしめて
黄色い菜の花畑の中に立っていた。
そらはあおくて、ぼんやりと晴れていて
だれも寒い思いをしないような春のお日さまが
ざぶざぶとどこにでもあふれかえっていた。

日陰のない夢のなかで。


目をさませばそこは見知ったベッドの中で
白っぽい天井はうすみどりの遮光カーテンをとおしてくるかすかな光で
やんわりと明るくなっていて
わたしは
ぐらついている心のありかにすぐに気づいて
また、夢のなかへ入ってしまいたくなった。

外は雨で
指先はつめたい。



まなほ


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