近づいてきた夏のおしまいを
ぼくがしらないわけではなかった
いつまでも続かないなつやすみ、きみがわらうしずかに
やわらかな靴のあしあと
流れていった水の底から
這い登ってきたいくつものあぶく
そのひとつになりかわってきみが息を吹き込んだ
ぼく という名前のうつろいやすさ
白い裾をひるがえして
去ってゆくように 近づいてくるように
そのどちらもが青い空のなかに吸い込まれて消える
たおやかな腕に囲まれて
まるい月をみていた、塀の上のちいさなバランス
ハナビ ヒバナ ハナビ ヒバナ
ぼくの育てたきゃべつの翼が
鳥のはばたきをその耳に移したなら
いつかきみがその腕で空を飛ぶことも
きっと叶う
ハナビ ヒバナ ハナビ ヒバナ
映画「月とキャベツ」より
まなほ
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