知らない足跡を追いかけながら
何も知らなかった、ただ、はだしで
前へ
進みゆくことだけを刷り込まれた
時間とともに行ってしまう人々の一列より
そびれて
ただ濃いはいいろの穴をこぼしながら点々と
足を投げ出してくずおれていくひとつの背中
風にまぎれてゆく背中
呼びかける声を吸いこんだくうかんに
ぽとり
そう聞こえない音を垂らして落ちこんでゆく 一粒の力ないしずく
それになりかわって垂れてゆく
ぼくときみとわたしとあなたとわたくしたちとの
ささやかにちいさな戦いのあとさき
存分に力をこめたはずの刃にそむかれて
脚を殴りつけた腕は、「くう」を掴む
さらさら さらさら
指のはざまから昨日の隙間をのぞいて片目をつむる
色とりどりに散らばった残骸は誰のかたわれだったのか
すがたを見出せずにぼくが立ちつくす
投げ出された足と白い背中と
ちいさなその後姿を吸い込みながら砂はひろがる
どこまでも足跡の先を追うことは叶わなかった?
唐突に倒れこんだきみの腕は砂の上に置かれた
うらがえったかたちのまま 指は
ちいさく 天を向いて
そりかえりながら
かぼそく、声をあげたのか
行き先をわすれた魂のあとさき
点々とつづいた灰色のあしあとのさきにつながりながら
ただ その白い裾を砂によごして横たわる
そのような誰も
かつては
いくさびとと呼ばれたろうか
前もなくうしろもないこの場所にただあしあとも残せず
風にまぎれてゆく背中に呼ばわる声をもたず
ぼくはきみはわたしはあなたはわたくしたちは
たしかに
いつかは消えてゆくのだけれど
まなほ
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