| 2002年12月11日(水) |
会いたい人に会いにいく |
ちょっとしたすれ違うタイミングの誤差が 命とりになることが、毎日のなかには思いのほかたくさんあって それを踏みはずさないように行くことなんて、とうてい わたしにはできそうにないと思う
そういうわけでまたエアポケットの中に ぽん、と はまってしまうわたしがいる
「会いたい人には会いにゆけ」
そう言いきることばの響きはとても好きだけど 会いたい人がいても その人が、どこにいるのかわからなかったり 自分が、どこにいるのかわからなかったり 出て行っていいのかわからなかったり 瑣末な事柄があれこれ降ってきて足をとめたり なにより、会いたい人が自分に会いたくないかも知れないと思ったりして 臆病なわたしはすぐに踏み出せなくなる
それがたとえば 親友でも 恋人でも
すぐに踏み出せなくなる
わたしはあなたに会いたいけれど あなたはわたしに会いたいですか
そう、尋ねてしまいたくなる 臆病さの持ち合わせが存分にありすぎて どうにもこうにも冬の中で身動きが取れなくて そうして、ことばにならない心配ばかり 無駄に膨らませていく、夜のなかに 浮かんで、まあるくなって、しずんでいる
今日もまた、足を踏み出せないまま日が暮れてしまいました。
今日の月は半かけの月、 かたわれのいない、 半かけの月、
まよなか チョコレートをひとつがりがりと齧って それから、みっつの錠剤とひとつつみの散薬を口の中にほおりこむ、 そうしてのみくだす、わたしの血の中をある濃度をたもってめぐるだろう それらの薬 おなかがゆるくなる こんな飲み方をしているなんて患者の風上にも置けないね、 と、よくわからない言葉で自分を笑って、 一日に三回の食事と三回のお薬をまもれないわたしは 真夜中にこうして、ひとりで摂取したりする 数の外でかぞえられる、 くうはくみたいな、たべものとおくすり。
そうして二階に上がって、ふとんのなかで、 またわたしは飲むだろう ふたつぶの精神安定剤と、半かけの睡眠薬。
今日をおしまいにするために 「眠り」のなかに なるたけ、するすると 入ってゆけるために
目をみひらいたままわたしは天井をみつめる カーテンをみつめる やわらかなバスタオルでつつまれた枕をみつめる いつまでもいつまでも みつめる
その時間があまりに長すぎてわたしはこの世界から別の世界へ飛びたく思ったから それだから
あたたかな茉莉花茶のなみなみと入ったマグカップと一緒に おふとんのなかにすべりこんで、わたしは 枕もとの薬袋をとりあげるだろう
ごめんなさい と 心の中でつぶやきながら
ゆるゆると血液にとけていくお薬の成分ども。
まなほ
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