眠る前 まっくろなくうかんに向かっておやすみなさいを言う それがわたしの挨拶で 誰にも届くわけでもない
手に負えないことが増えたので このたましいは簡単にぺしゃりとつぶれた つぶれたのでしばらくおやすみをいただきたく思い だけれど、こんな片隅でひっそりと 挨拶をしたところで、それはやっぱり だれに届くのだろうとばくぜんと思っていた
夜
紫蘇のお茶が薫りたかく味も濃くて あたらしい詩のうまれる気配はどこにもないから わたしはこの息が吐き出される先のくうはくを 不安というものにいろどって時間を過ぎさせているところ つかみどころもなくみんなながれた 赤い血とおんなじに みんなながれた
詩の要請
ことばの要請
たくさんのひとがわたしに向かって言葉をかけた かけられた言葉をさがしてひろいあつめているうちに たくさんのひとが行ってしまった ゴミ箱行きにしたたくさんの小さな手紙 と 同じ数だけの絶望 おびただしい数にふくれてわたしを占拠するもの、それがことばことばことば 死んだことばは黙ってわたしを縛りつける ひきずり落とす、向こうのほうへ 向こうのほうへ
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深夜、ひとりで、「風花」をみた
再生したい、と
思った
まなほ
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