『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2002年11月18日(月) 秋色の咲いた

ひるまに眠っていると外のことがわからなくなる

今日も
目を覚ましたら夕方でした
ただまだ夕暮れ時で
灯ともし頃のうす闇で
そらは水色だった。

水色のそらってあるんだよね

クレヨンの水色と空色はどうちがうんだろう
そう思いながらたくさん塗り続けてちびてしまった
青の色の色鉛筆

わたしの絵の具箱の中ではいつも
白と青の絵の具チューブがまっさきにぺたんこになっていった。

そらのいろ
みずのいろ
かぜのいろ
かげのいろ
ひかりのいろ

どれにも混ぜてしまうから
うすい青の色はいつでも先にすりへっていく。

つめたい風に洗濯物が揺れていたから
サンダルをつっかけて外に出た
弱々しくなった鴇色のお日さまに照らされてずらっと
居残りの自転車が並んでいる学校のうらにわの自転車置場。
この風景画を、わたしはいつも好きだった、
ぎゅっと、心臓の奥をつかまれるみたいに
背骨のあたりからどきりとしてくる、「わたしのすきな風景」。

昔、
この季節になるとこの庭には真っ赤な小菊がいちめんに咲いて
蜜蜂がたくさんやってきていた。
それを押しのけながらランドセルを背負ってわたしはうちに帰っていた
よってくる蜜蜂はちっとも怖くないと言ったら嘘だけど
でも、蜜あつめの邪魔をしてごめんねという気持ちになる
働き者の午後だった。

時間が止まるころ
冬になりかけの
ひだまりのなかの午後3時

そこでわたしの時間はいつも凍って
半透明にすきとおった蜜蝋のなかでこがねいろに固まって
たぶん、とろとろと眠りながらゆるやかに保存されていく
そんなふうな夢を見ていたこと


紅い小菊の一面に咲く庭を、わたしはとても好きだった。
ある年、父親がばっさりと根こそぎ引き抜き歩いたそのときから
紅い小菊はどんどん減っていって
今では、一株が残るだけになり
あちらこちらから移植しようとした小菊も減って
ぽつんぽつんと幾株かの色違いの小菊が咲いていることを
庭のなかで、すこし冷えかけた洗濯物を抱えながら
もう一度みつけた。

紅いのと、黄色いのと、濃い桃色をしたのと、それからオレンジ色のような
赤と黄色が偶然にまざっちゃったのでここにいます、とでも言うような
ふらふらと揺れる橙色の、小菊の一株ずつが
せまくて細長い庭のなかにぽつりぽつりと地面に這うようにして伸びて
そうして、咲いていた。

点在する色はまぶしいようで
それでいてとてもさびしくて
眺めればてんでばらばらの花びらの数と厚み
あなたはどこからきたのだろう、と
風の中でほんの少しだけ考えていた。


明日は、きっと、どこかへゆこう。




まなほ


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