毎日毎日。 つめたい雨がよく降る。
わたしは 外に出ないで、ここにいる。
口をひらいてこぼれだすことばが なんだか 自分のものじゃないみたいに感じながら ひとつ、奥まった場所から ひとごとのように外を見ている 膝を抱えて。
つめたい手。
もう、冬が近いのだなと思う。 あの春頃のはださむいときから 時間が止まったままみたいなわたしのなかみと 外の世界の温度が、だんだんに 重なっていくみたいな、 そう、
つめたい手。
365日をまんなかに挟んで、わたしは一緒になれるのかな。 置いてきぼりになってしまった時間を重ね合わせて 光に透かす、トレーシングペーパーみたいに。
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窓をあけたら月があかるかった。 だからもっと窓をあけた。 真夜中も過ぎて、未明のころ。朝焼けはずっと遠くにあって
つめたい手で、わたしは窓を開けた。
星がひかっていた。 冬の星、 冬の星座。
今年はじめてのオリオン座とシリウスを満月の夜にみた。 きれいなあかるい月のとなりで、いちばんあかるい星が 冬の証拠にゆらゆらと光を溜めていた。 瞬きは空気の流れがつめたい証拠。
なぜだか、なつかしかった。
夏の空も、春の空も、たくさんたくさん見上げたのに この、冬の星座がつらなる空だけど、どうしてこんなに なつかしいとおもうんだろう。 ただいま、と言いたくなるんだろう。
わたしには、よくわからなかった。
ガラス窓をあけて 腕を伸ばして 外の空気に触れながら、そこはだんだんに冷えていて 肌のあたたかみはなにもない。 寒いはずの時間のなかで、だけどやっぱりわたしは すこしだけサトくんのことを思った。 今はもういないひとのことを、思った。 やさしくて、あたたかいひとのことを 思った。
つめたい手。
遠いとおい星のひかり。
ちいさなうさぎの星座を見つける日も、 たぶんもう、すぐそこまで来ているんだね。
まなほ
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