『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2002年09月16日(月) 枯れかけた植物

生まれ変わったら麦になりたい

そう思ってた

そう考える、わたしの名前の意味は、「オリザ」、稲のこと
誰かが埋めた真実の種から芽を出した、「オリザ」


・・・・・・あしたにゆうべに種を蒔けよ
・・・・・・人をなぐさめる愛の種を


「……だれかの糧?」

「……植物の人?」


だから、だれかに食べられるままでも文句はいわない
植物はだまって動物に食べられます
それでいい
それが決まりだから


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わたしが育てる植物は、最近、枯れるようになりました
というよりむしろ、じぶんにこの緑を育てられる気がしなくて、
花を咲かせられるような気がしなくて
そうして世話をしているのに枯れていく植物をみて
奇妙に納得したりする
このごろで

小さい頃はたくさん花を育てたけど
このごろはちっとも
何も、咲かない。


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今、庭では野生の韮の花が白い星屑みたいにたくさんくもり空の下で
あちこちからすっくりとのびて群をなしていて
わたしはただ
その白さと緑のみずみずしさとすこやかさに
穢れなさに
毎年のことながら、憧れてる。

自分をふりかえるとそこは無機質な黒い空間で
誰かがいる、
厳しい佇まいの白い服の骨ばったおんなのひとと
理由のわからない憤りをみなぎらせている真っ黒な真っ黒な怖いこわい男の人がいて
そのなかで
ちいさな少女がまっしろな何もないつめたいベッドに座って
顔を伏せてる、
肩のあたりをつぼめてちぢこまって
ただ、消えたいのに逃げ出せないからできるだけ小さくなって
注がれる視線の中でつぶれて消えていきたいのに
それができない

医務室みたいな部屋の中で
何年もえんえんと続いている、つめたいつめたいうすぐらいドラマ
気がついたら、ここ何年も、もしかしたら十年も抱え込まれている
しまいこまれている

「心象風景」。

扉がバタンと開いたらそれがみえる

だいじょうぶだよと言う声は、いつも
女の人の冷たさと厳しさと
男の人が発散しつづけてる容赦なくおそろしい黒いものに阻まれて
あの子には、とどかない


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この、目の前で枯れかけてく植物を
もういちどみどりに戻すことができたら
返すことができたら
わたしはもう少し、強くてやさしいものになれるかもしれない

そんな、体のいい
密かな願い事みたいな気持ちで
きのう、
ほんとに久しぶりに出た外の場所で
ちっちゃなアンプルの液肥を買った
半透明の容器に、人工的なグリーンの液体、
栄養素


  ごはんをあげるね
  今まで放っておいて、ごめんね
  これがまだ、間に合うのなら
  元気になってね


ひとしずく、ふたしずく、
きみの根元に注いだ


外はすっかり秋で
さむくて
風には冬のにおいがうっすら混じってた



もしも・・・・・・
(わたしはかんがえる)

もしも
この手が、植物を枯らさないようになったなら
じぶんのことだけできりきり舞いして
悪寒や発作や倦怠感や、わけのわからない涙にふりまわされて
血を流さなくてもいいようになったら、
流していても
ちいさな生きものの面倒をみられるようになったら


わたしは花を育てたいです
やさしい姿をした花を
ちいさいころから大好きだった花を
あの庭に咲いていた矢車草を

わたしは育てたいです
サトくんのために


次のあなたの誕生日には間に合わないかもしれないけど
何年か先に、そんな日がきたらいいなと

ばくぜんと
願っています



9月16日(月)、朝に  まなほ


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