『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2002年06月05日(水) 出来損ないピエロ。


この世の中には壁がある。
目には見えない壁がある。
舞台の上でピエロが泣いて、あっちのほうじゃ旦那方が別れの涙
壁の見えないピエロのまぬけ、舞台の上から
落ちて死ぬ

「壁のうた」


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不安さんがやってきた。


あたしのなかには
怖い怖いさん、とか、
切りたいさん、とか、
消えたいさん、死にたいさん、などなどが棲んでいる。

不安さんはそのなかの一人で、たまに顔を出す。
背中のほうからやってくる、黒っぽいひとだ。
気がつくとぱっくり大きな口をあけてひとを丸呑みできる胃袋のでかいひとだ。
気配がないので回避するのに苦労する。
というか、回避不能。

「夜中に目を覚ましたら、もうソレはやってきてしまったあとで
 あたしはすっかり、闇に食われていました。」

そんな表現がぴったりなように、しずかにぼーっと現れて
ぱっくりあたしを頭から食らうひとだ。


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 あ、今気がついたの。
 これじゃまるであなた
 「千と千尋の神隠し」のようだネ。

 カオナシ。
 ふくれあがるほうの。
 あたしあなたのことが好きよ。

 関係ないけれどあたしはあの映画がかなり好きだ。
 できたらもう一度見たいかなと思うくらいだけれど
 だけど、映画館にひとりで足を運ぶ楽しみを以前はきちんと味わえたのに
 気がついたらそれができないようになってしまったので
 その思いは叶えられずにいる。
 まだ上映している映画館が遠いせいも少なからず理由にあるけど
 ひとりは、こわくて、
 そうして動く原動力には、弱すぎてつながらない。

 宮崎もの(というかジブリ作品)はほとんど見ているけれど
 「紅の豚」がとても好きだ。あと、「おもひでぽろぽろ」。
 ちょっぴりマイナーかも知れない。
 でも、好きだ。


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とにかく、不安さんはやってきた。
ついでに混乱さんも連れてくるのでちょっとタチの悪いひとだ。
ぐちゃぐちゃにひっかきまわされる頭の中を整理するのはときどき難しい。
耳の中からまるで何かがこぼれ出すのを止めるみたいに両耳をおさえて
がんばってみるけれど、だめなときも、ある。

じぶんの歩く地面は
安定しているようでほんとうはものすごく頼りないのだ
ということが、よくよく身にしみる。
ほんとうは
わたしが今しているこのスガタカタチなんて
ひどく頼りないものなのだということも。

「みんないってしまう」

ただ、その事実に翻弄されるあたしがいるのだと思う。
みんないなくなってしまう。
あたしのまわりから。


「嵐が来るよ、そして行ってしまう、いつも。」(Cocco「焼け野が原」)


そのとおりなのだ。
そして、あたしは、それがこわいから
こわくてたまらないから
周りから注がれる命の水がなければあたしは干上がって
いとも簡単に
正気をなくすような気がしてならないから。


……逃げ回るのです。笑いながら。たぶんね。


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今朝一番最初にしたことは兄の上に落っこちることだった。

いえ、
だからね、
文字通り。
落ちたんです。

てくてく歩いてとにかくバイトに行く支度をしなければならないと
家中のあちこちをうろうろしていた。

なにしろ首切りされるところを、すべての事実をぶちまけて、
それこそ精神科通いのことも緊張体質のことも新しい仕事を探せないことも
ぶちまけた長たらしいメールを「飛び降りる」気分で上司に書ききって
結果、お情けで7月までは置いてもらえることになったんだから。
しかもすでに一日無気力なまま休んでしまったのだから。
もう休めないでしょう、いくらなんでも。(笑)

かばんの置いてある部屋では兄がゲームをしていた。朝の頭休めのひととき。
そこを、ちょっとゴメン、といって何かを取ろうとしたときに
ぐらりんと足元がふらついて、どさっと倒れた。
文字通り兄の真上に落っこちたわけで、、、。

だいたい、いつも、よろりら、と歩いてはいるけれど
階段から落ちかけたこともあったけれど
実際に、水平にまで倒れたことはなかったので、たいへん驚きました。
(驚くとかそういう問題ではないと思う)
とりあえず兄もプレステも隣においてあったオレンジジュースの入ったマグカップも
全部無事だったので、いや、よかったなあと、思った。
(こんな発想でよいのやら)


とりあえず出かける。勤務先まで2時間弱。クルシイから目を瞑ってうごかない。

電車の中でうつらうつらしていると
まるで現実のような夢をたくさん見た。
たくさんたくさんたくさん、みた。
むかしの友達が乗り込んできてあたしを見て、にまっと笑うとか
かばんから何かを出したのに、電車の床に落としてしまって拾えない、とか
現実と区別のつかないリアルなものをたくさんみた。

あれが本当に夢だったのかあたしにはよくわからず
降りるとき何度もうしろを振り返って
自分の座っていた場所に「もうなにもない」ことを確認せずにはおれなかった。
ときどきそういう夢を見る。
リアルすぎて現実と区別のつかないこと。
あたしはこうやっていつか。夢に食われていくのかな。

にこにこと笑いながら。
上司に向かって、軽口をたたきながら。
家に帰って、冗談を言っては、両親を笑わせながら。
はしゃぎながら。
ピエロのように。

ただ
こころの中で
いつも
いつも

たえまなく脱力感とか虚無感とかいうやつに襲われていて、
こんなことをして何になるのだろうとかいうむなしさや自己卑下やから逃れられずに、
それでも目の前にいる人を笑わせるために気がつけば体を張って「奉仕」をしてしまう、
どれだけ疲れはてていても自分にとってツライと思う現実を語るとき、
それを思いっきり茶化して笑い話に変えることだけは忘れないでいる。

そのぜんぶにうっすらとまぶされた埃のようにほんとうは感じている。


「あたしは、ここに、いていいのだろうか。」


そう思い続けながら
どこかおびえながら
それでも笑いながら笑わせながら暮らしているというだけのことだった。
不安さん、に食われたものの一日というのは。

ただ何をしても何を言っても
自分をとりまかれたこの
まだあたしには表現しようのない
自分だけがその場所から浮き上がっているというような感覚や
不釣合いな言動ばかりしているのではないかという恐れや
自分がはっきりと場違いであるという「確信」や
そんな、浮遊感から逃れられずに。

じわじわと締め付けられていくように。追い詰められていくように。

「きえてなくなりたい」

そう思い始め
真剣に検討しはじめる、その前に
あたしは不安さんを打ち負かさないといけない。


そのことだけは、はっきりしているんだけれど。



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数日、更新をさぼりましたら、心配のお手紙をいただきました。
どうもありがとうございました。

こうやって、生かされていくのかなあ。
思いました。

インターネットをなんとなく嫌うお医者さん、がいるような気がしますが
同じような心の不安定さをかかえた人たちで、寄り集まることを
嫌うお医者さんがいるのは確かですが(というか主治医がそうですが)
でも、それで命をつないでいる人も、たしかにいるような気がします。
口を酸っぱくして言葉を尽くして説明をしないかぎり
元気なひとには、まったく通じない「恐怖」の部分があるのだということを
そしてその説明をする力がないからこそ
打ち負かされているのだということを
なにも言わなくても感じ取ってくれるひとがそこにいるなら。


午前4時半です。
あまりの眠気に睡眠薬を飲まずに眠りについたら
きちんと2時間半で目がさめてしまいました。
なんでだよう!
時計に向かって文句をいう午前2時過ぎ。草木も眠るのにあたしは眠れない。

朝なのに雷が鳴って
雨が降り始めています。

雷鳴。
割れたそらが怒っているよ。
最近なにかといわず
あたしの頭の上のそらは機嫌がわるく、不安定に
その胃袋に抱えたものをぶちまけています。

なににたいして?

どこへ向かって?



・・・・・・あなたの頭の上のそらは、いま、どんな色をしていますか。



まなほ


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