さっきYahooで、森村誠一原作 “人間の証明” の動画をダウンロードし鑑賞した。
『お母さん、僕のあの帽子、どうしたでしょうね』 のフレーズで有名な作品である。
『ママ、僕がそんなに憎いかい?』 ニューヨークのスラム街から、母を慕って日本にやってきた混血児のジョニーは ファッションデザイナーとして絶頂にある、他ならぬ自らの母親に疎まれ殺される。 母親は、生甲斐にしていたドラ息子も恥の子であるジョニーも、ともに失うことになる。
CGだらけ&言葉狩りで毒消し済みの新作を観るくらいなら、やはり昔の映画が良い。 70年代の映画だから中途半端な古さではあるが、まだ日本人が無闇な明るさよりも ペーソスを愛し、貧困からの脱却を旨としていた頃を題材に作られたものであり しみじみ訴えかける憂愁感が全編に行きわたっている。 何よりも役者が、今どきのような容姿重視の大根揃いでないので、台詞回しもいい。
子供の頃、テレビドラマで親と一緒に見た記憶があるが、ストーリーは理解していなかった。 混血の息子のあの印象的な台詞だけは、繰り返し耳にしたのでよく覚えている。 このダイイングメッセージのような言葉の主はどうなったというのだろう? 麦藁帽子が一体どうしたというのだろう? あの時は確か、母が観ながらほろほろ泣いていたっけ。Mama, do you remember?
殺されたジョニーが黒人米兵との間に生まれた子で、その母親に暴行したのが 今回捜査に協力したアメリカ人刑事で、そのレイプ刑事は尚且つその時 日本から来た刑事の父親をもなぶり殺していた、という、極めて因果な設定。 そんな出来すぎた因縁があるかい!という点はまぁおくとしても 真珠湾攻撃についてのアメリカ人の心象や、日本での進駐軍の描かれ方などから 当時既に戦後30年を経ていながら、まだまだ戦時中の想い出が風化しておらず 少なくとも日本人とアメリカ人とが互いに抱く感情には、現在との微妙な隔たりがある。
常日頃思うのは、自分の親に殺される子供ほど不幸な存在はない、ということである。 誘拐殺人も痛ましいが、子供にしてみれば、親に命を奪われるよりはマシだとさえ思う。 また、親や子を目の前で殺される以上に残酷な仕打ちもまた、ないであろうと。 そのどちらも盛り込まれたこの作品は、やり切れないほど重く哀しい物語と言える。
途中、俳優陣の顔ぶれを見ていて、豪華キャストながら故人の多さに改めて驚かされた。 三船敏郎、鶴田浩二、ハナ肇、伴淳三郎、深作欣二、そして松田優作。 今では白髪の目立つ岩城滉一や皺だらけの竹下景子が、まだあんなにあどけないもの。 30年近く経つんだから、無理もないが…。
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