みちる草紙

2002年10月21日(月) 雨上がり

昨夜は宵の口に仮眠を取ったせいか、明け方近くまで寝付かれず、今朝は寝坊した。
『うぇいかぁ〜っぷ 起きる時間だよ〜♪』と耳元で最愛のぱぱの声(目覚まし時計)が
アタシを目覚めさせようと、愛をこめて幾度も幾度も同じ文句を唱えているのに
目玉が眼窩の奥にめり込むほど深く眠っていたため、夢の中でぼーっと反響するだけ。
部屋があまりにも薄暗いので夜が明けた気がせず、ようよう意識がはっきりしてきて
パラパラと雨が出窓のガラスに当たる音を聞き、んっ!とぱぱ時計の針に目をやり
ヤバイ!Σ( ̄ロ ̄;)と跳ね起きる。雨の朝、性懲りもなく繰り返されてきたシーンである。

雨が降ると、駅まで20分ヒーハー息切らせて歩くか、渋滞覚悟でバスに乗るかしかない。
つまり、普段より最低10分は早く家を出なければならない訳だが、その10分の余裕を
生み出すことが朝はどんなに困難なことであるか、貴女も女ならば分かるだろう。
だが、今朝のアタシはそれほど慌てなかった。遅刻し慣れてド厚かましくなったのか?
それもあるが、近頃、同僚(正確には上司)Tが、とても優しくなったからである。

Tは以前の温厚なTさんに、いやそれ以上に無害な人柄に戻った。
もともと仲が悪かった訳では決してない。だが、今月初めの殺人的な忙しさにあって
お互い目を三角にして気が立っていたせいか、募るイライラは恐るべきポテンシャル‐
エネルギーを孕み、些細な鍔迫り合いが思いの外の大爆発を引き起こしたものと見える。
ところが、アタシが、衝突の翌日にはケロリとしてい(るフリを努め)たのとは逆に
Tの方はそれこそ腐れた女みたいに、ずぅーーっと低気圧のままだった。
まるで人が変わったように陰険になり、拗ねた態度をこれでもかと押し通す。
年は同じだが、ここではアタシの方が後輩なので、一応シタテに出てやっていたらまあ…
(やつの仕打ちは11日の記述を参照されたし)
男のくせに何だこいつ!(-"-;) とアタシも体調が悪かったので、キレるまでが早かった。

以前なら『あれやっといて下さい』『これやっといて下さい』と、人に仕事を頼むのに
にべもなかったのが、ここ数日は『ご多忙のところ申し訳ないんですが』と必ず
前置きされるようになり、些か背筋が寒くなるほどである。
ただ、アタシのギリギリ出社は何も今に始まったことではないから、喧嘩の前も後も
素行が変わらないのはきっと褒められていい筈… は、ないか(-。-;)
もとい、
であるからこちらも通常は「ああん?(-"☆)」という顔で引き受けるところを
「はい♪分かりました(*^。^*)」とか、たえずかわいらしく応答し、お互い腫れものに
触るような調子で気を遣い合って、当面は良好なパートナーシップを保っている。

思えば、先々週の一幕には、アタシにも一抹の後ろめたさがない訳ではなかった。
常日頃、社長はいつも、“付き人”と目されるTに(だけ)つらく当たる。
会議の席上などでは、衆目の中、ボロクソのケチョンケチョンにこきおろされる
そのさまは、気の毒さのあまり、正視に耐えないほどであった。
それだのに、フェミニストを標榜する手前か、女性に対しては決して声を荒げない。
そこにつけ込み懐に逃げ込んだつもりはないのだけれど、ハタの声を聞けば
『Tさんらしくない意地悪は、あれは言うなればジェラシーよ』とのことらしく
だからと言って処遇の不当さへの憤りを、アタシにぶつけてこられても困るのだが
これが逆の立場ならきっとやり切れないだろう、と神妙な気分にもなるのである。
アタシもクタクタだったが、彼も疲れていたのだろう。恐らく遥かに。
相手を思いやれなかったのは、もしかしたらアタシの方だったのだろうか。
丁重ではあるが、どこか気を抜かれたようなTを見ていると、良心の痛みを禁じ得ない。

風が雨雲を吹き飛ばし、晴れた夜空に月がこうこうと照り渡っている。
明日の朝は、遠い駅まで歩かずに済みそうである。


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