みちる草紙

2002年01月15日(火) Do you have a family ?

仕事を終え、ふとした気紛れから大人しいN係長を誘ってみる。
「さ、飲みに行くわよ!( ̄ー ̄)ノ」
出荷報告書に目を通していたN氏はキョトンと『え?まじ?('◇')』
「お仕事残ってるなら無理にとは…」『あ、いや、行きます行きます』

O係長は新潟に出張中。M主任は直行直帰。S主任は接待のため早退。
今夜は無性に、真直ぐ家に帰りたくなかった。例え猫の子でもいいから
束の間慰みの話し相手をアタシは欲していたのである。
お堅いN係長は、生真面目に仕事の話題で正論を展開し、アタシは欠伸を
噛み殺しつつ少なくとも今宵だけは、孤独に飲んだくれて潰さず済むのを喜んだ。

N係長の家族のことに話が及び、存外アタシは好奇心をもってあれやこれやを傾聴する。
『僕は口に出して女房に感謝を述べたことはないし、誕生日だクリスマスだと
プレゼントを贈ったこともないけど… 自分にとって最高の女性は女房です』
彼の真顔をまともに見返し、アタシは感動のあまりしばし絶句したのであった。
「…Nさんて最高のダンナさまね」『そんなことはないですよ。家じゃ年がら年中
女房に気が利かないだの何考えてるんだのと、ブツクサ言われてばかりですよ』
「今まで自分の奥さまをつかまえて、やれマグロだ婆だと悪口しか言わないような
ご亭主しか知らなかったから…」『そんなことよう言いませんよ僕は(笑)』

『メイ子さんは、なんで一人暮らししてるんですか』「…なんでって…(-。-;)」
『貴女みたいな弱い人が、東京で独りで生活してることが、僕には不思議で
しょうがないんですけどねぇ』「アタシ、そんなに弱いですか?」
『弱い弱い。最初は何て勝気な人や思たけど、精神的にめちゃめちゃ脆いでしょう』
「はぁ、仰せの通りかも…」見ている人は見ているものだと思わず冷や汗。
『思い切って縋ったらいいのに、プライドみたいなのが邪魔してるんですかねぇ…』
ふむ。それこそ脆くて透け透けの、クラゲみたいなそれをプライドと呼ぶんなら。
でもねぇNさん…。

気がつくと、11時半をまわっていた。ウカウカしていると終電が無くなる。
居場所のない女に付き合わされた迷惑も構わず、N氏は勘定を皆払い
車で送ろうとまで言ってくれた。丁重に断り帰途につく。これっぽちも酔っていない。
そして冷え切った自室で間もなく朝を迎え、相も変わらぬ一日が待ち構えている。


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