みちる草紙

2001年12月14日(金) アデルの恋の物語

ビデオを2本レンタルして家に帰り、うち1本を観た。
イザベル・アジャーニ主演 “アデルの恋の物語”(1975年製作)
フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの娘アデルがモデルの、実話を基にした映画。
自分に見向きもしなくなった恋人を追って追い続け、遂に苦悩のあまり
発狂してしまう、醜女の深情けのような、哀切極まりない悲恋物語である。

教養も気品もあり、最初は凛とした美女であったのが、激しい絶望のうち
次第に精神の閉塞状態に陥り、みすぼらしい狂女へと変貌して行くさまは
見ていて無性に辛くなった。一途な恋心とは言え、行動はストーカー以外の
何ものでもない。ボロボロにすり切れた身なりで男のあとを尾けまわし
握りしめた札束を差し出しながら哀れな目を向けるアデルを、ピンソン中尉は
心底おぞましげに「みっともない!」と言い捨てて馬の踵を返す。
変わり果てた姿のアデルに人々は好奇の視線を向け、親しかった者らは
目を背けるようにさえなる。何故女というものは、ここまでいれあげてしまうのか。
それも決まって、心優しい相手にではなく、酷薄な男にばかり。
「こんなになるまで俺を想って…」と感激するめでたい男など、まずいないのに。
ただ、芸術家肌で感受性が強く情熱的であった、一人のうぶな女の転落劇に
我と我が身を重ね合わせ、身につまされるものを感じないでもなかった。

…当時19歳のアジャーニは、この映画での演技を買われて、後年の
“カミーユ・クローデル”に抜擢されたんだな〜(´o`)
正直、あまり好きな女優ではない。顔つきがどことなく桃井かおりに似てるから。


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