カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 「ワァ」と叫ぶ。小さな声で

=「ワァ」と叫ぶ。小さな声で=

その坂道は、小さな公園へと続いていた。滑り台と、鉄棒と、石で出来たベンチだけがおいてある小さな公園。あまりに、寒すぎるせいか誰もいない。でもきっと、平日の昼間にだって誰もいないのだ。その公園は、微かに懐かしさを呼び起こした。確か、こんな公園で星をみながら一服した記憶がある。その記憶が、蒸し暑い夜のことなのか、りんと冷え切った夜の事なのか、もうわからない。しかし、僕は、例の女の子と二人で長く暗い階段を登り切って、高台の公園から街の景色を見下ろした。見下ろして、見下ろしている自分に気分が良くなって、小さな声で、「ワァ」と叫んでみたのだった。小さな声で。

2005年05月01日(日)
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