カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 夕暮れ時の「さて…」

=夕暮れ時の「さて…」=

「お願いです。今夜、ここに泊めてください」泣きつかれたボクはだいぶ途方に暮れている。必死な女の子をなだめ、熱いコーヒーを出してやる。そしてボクは、タバコをふかす。さて、ボクは今タバコに火をつけた。ここから、どんな言葉を口にするべきなのだろう。「まぁ」そう言ってみたものの、その文字はぽとりと落ちていく。確かに、今日は、彼女はいない。彼女はいない。さて、さて、さて。とりあえず猫を抱こうとしたが、猫は女の子に撫でられてゴロゴロのどを鳴らしている。さて。彼女は、明日の朝十時に友達との旅行から帰ってくる。ただいま、と、おかえり。きっと、ボクが女の子を泊めたとしたら彼女は気付くだろう。村上春樹の小説に、似たような場面があったきがする。いや、それはただ、「女の子とただ一晩過ごした」だけだったはず。確かに、ボクは女の子と「ただ一晩過ごす」だけだろう。ボクに妹よりも年下の女の子なんて抱けはしないし、抱くつもりもない。でも、きっと彼女は怒る。どうせ、猫は知らんぷりだ。「あの、、君は他にあてはないのかな? ほら、従姉妹の家だとか、友達の家だとか」俯いたまま。「ごめんなさい、無いんです…」とりあえず、事の発端を思い返してみる。夕方アルバイトから帰ると、女の子がマンションの前に立っていた。それだけ。ボクは全くその女の子を知らないけれど、その女の子はボクのことを知っているという。それだけ。さて…。

2004年12月14日(火)
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