カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 a short film

= a short film =

昔友達に、芯がはっきりしない、とか言われたことがあったけど、今まで実感せずに生きてきたと思う。でも、今回はさすがに「芯がはっきりしなさすぎ」たかもしれない。
 ジャケットの胸ポケットからマルボロを取り出して、少し風の強い中火を付ける。百円ライターがカチカチ音を鳴らせながらちっぽけな火をともして。
「おーい。長岡君この河原沿いのススキってなんかよさげじゃない? って、おっ。た、煙草。か、体に悪くないの……?」
 明らかにまじめそうな顔で見てくるもんだから、吸うに吸えなくて、結局地面に押しつけてもみ消した。少し離れたところにまだ全然長い煙草を投げ捨ててから、余所行き用の笑顔を石井に向ける。


=フレームアウト=

カメラから覗いたとき、その狭められた景色の隅々でモノモノが生きているのを感じた。写真はぴたりと動きをやめた瞬間を捕らえるモノだと思っていたのだけれども、それは確かに生きていた。捕らえられた瞬間死んでしまうような写真ではどうしようもない。いっぱしの写真家気取りで考えて、シャッターを押す。
フレームの外の景色を撮る。

2003年06月19日(木)
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