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■ 自我の防衛
打ちのめされた表情が、遠く離れた大地から僕を上目遣いに見つめている。僕はバランスを取り損ね、この岩山から落ちそうになる。広大な大地の中にぽつりとその不安定な地盤は揺れ動き彼を振り払っている。混沌とした大地の上に乗っかって、彼はバランスを取り損ね、今まさに奈落の闇に落ちていこうとする。全てを司る閻魔大王様が力無く落ちていかんとしている彼を問いただす。彼は弱々しく弁明を繰り返すのだ。何とも愚かな−僕はどうかしていた、どうかしていたんだ。ほんとうだよ。ああ、なんてことをしてしまったのだ−彼は僕を見つめている。あたかも僕を。もうよそう。眠りが強烈に僕を襲う。僕僕僕僕。僕はどこだ?この暗闇は何なのだ。あまりにも暗すぎる。前はどこだ?前進。いや、逃げなければいけない。寂しげな表情は遠くに助けを請いすぎて、悪魔までを引き寄せた。闇黒の中で回り続ければ、いつか必ず光に出会えると信じているのは、あんまりにも陳腐なのだろうか。僕は直径17メートルの円形すなわち、円周率を約3と置いたときの、3×17。ああ、たった51メートルを回り続けているというのか!逃げ続けなければいけない。走り出した列車は線路上を移動し続ける。環状。閻魔大王に裁かれた後の記憶は。記憶は。ああ、何も思い出せない。深く沈む感情。環状に感情が回り続け、懺悔、怒り、沈鬱、激怒、錯乱、幻影、破壊、救済、懺悔。ヤジロベイが転んだ。虚しすぎる環状に彼は、命を絶とうとしているのか。泥水の中から砂金を洗い出すような、単純作業。永遠だ。意味を持たない物質の中から、選び出す作業。眠りの渦から逃れてしまったカラスは、二度と眠ることができない。何故か?眠りとは幻影だからだ。愛も幻影。全て幻。救済さえも幻。ただ円形の中で歩き回っているにすぎない。(自我の防衛。平成14年11月16日)
2002年11月16日(土)
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