カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 震えるナイフ

=震えるナイフ=

雨が降って、雨が止んで。本当にすごい遠くの方で、銀色に輝くナイフが落とされた。その振動は、薄く地面に伸びている水を伝って、ここまで届いているのだ。そしてそれは、限りなく遠くの方で存在しているのだ。

=ネジに、歯車=

晴れてても雨が降っても、砂嵐でも、僕は砂漠の真ん中に立っているけど、君はすでに僕のことなんか忘れているだろうから、水たまりに足を突っ込んでしまったときや、雷が北北西の方向に落ちたときくらいは、本当に些細で良いから、雀の涙ほどでも僕のことを思い出して欲しいんだ。
機械。油差し。ネジに、歯車。あと、君。

=かナしミ=

深く、あまりにも深い悲しみだ。夜中の海へと潜っていって、珊瑚や岩礁やらを避けつつも、何かを求めて沖に向かっている。何かがそこでぷっつりと終わってきそうなんだけど、真っ黒で、真っ黒な海は未だそこにあるため、逃げることは出来ない。

2002年07月29日(月)
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