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『年に一度、の二人』 永井するみ (講談社) - 2007年09月06日(木)


永井 するみ / 講談社(2007/03/07)
Amazonランキング:126802位
Amazonおすすめ度:
題名には惹かれましたが…。
競馬場が舞台ではねぇ・・・
羨ましい



<年に1度の逢瀬、私だったら我慢できませんが・・・>

ミステリー畑のイメージが強い永井さんの作品を久々に手に取ってみた。
この作品はミステリーじゃなくって男女の心の機微を描いた恋愛を絡めた人生を模索する作品となっている。
読後感も良く、ライトな感覚で読めるといった点においては評価できるんじゃないかなと思う。

舞台は香港のハッピーバレー競馬場。
全3編からなる連作短編の構成であるが、「シャドウ」では人妻と香港在住の男性との恋が描かれている。次の「コンスタレーション」においてはOLと年下の牧草を研究している大学院生との恋が描かれている。
最後の「グリーンダイアモンド」では地元香港に住むカップルの視点をも交えて前2編の登場人物達を集結させている。

各編においてどうしても消化不良気味だった読者も最後に大団円とまではいかないまでも、“腹八部目”ぐらいにして本を閉じることが出来る。

女性作家であるから女性心理の描写に長けている点は当然であろう。
たとえば、「シャドウ」に出てくる医者の妻沙和子。世間一般的には何不自由ないといっても過言ではない境遇である。
その彼女が不倫をする。まあ、それは女性作家お手のものであろう(笑)

逆に、度肝を抜かれたのは宗太郎少年の心の動きの巧みさ。
これは男性読者からして、物語の展開上と年齢(高校一年生)からして当然現れるべき心理描写が出来ている点に強く感服した。

彼が香港に来るべきことはどうなんだろうと不信感を持ちつつページをめくった読者が大半だったと思う。
親の不倫相手に会うために同行させられたと言っても過言ではないのいだから。
それが登場人物だけじゃなく、一筋の光明を見出して読者までもが本を閉じることができるのである。

私は登場人物の中で一番何かを掴んだのは宗太郎であると信じている。
私なりに爽快感を感じたのはそこで、作者の手腕の確かさを賞賛したいなと思う。

少し余談ですが、日本の競馬場だったらこの物語成り立たないでしょうね。

1年後のデートの約束をするロマンティックな場所とは到底思えませんものね(笑)

面白い(8)


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