『パパとムスメの7日間』 五十嵐貴久 (朝日新聞社) - 2006年11月09日(木) 五十嵐 貴久 / 朝日新聞社 Amazonランキング:59440位 Amazonおすすめ度: 親子が仲良くなる秘訣は入れ替わり?(笑) <年頃の娘を持たないサラリーマンの方にも読んでもらいたい痛快ファンタジー> 娘を持つ父親なら誰しも感じる娘の可愛さ。 その中にはもちろん、本作の父親が感じているように、成長して行くにつれてだんだん離れていく寂しさをも持ち合わせている。 本作の主人公はさえないサラリーマンの父親とイマドキの娘。 まさに絵に描いたような小説におけるシチュエーションである(笑) さてどうなるかというと、タイトルどおり7日間だけふたりのあいだに変化が起るんですね。 そう、本作は47歳の父親と17歳の高校二年生の娘が地震により人格が入れ替わるという事態に巻き込まれる騒動を描いているのである。 ご存知のように作者の五十嵐氏はホラーから時代小説に至るまで幅広いジャンルの作品を書ける稀有な作家である。 1作ごとにいろんなタイプの作品を書き分け、ファンを唸らせている。 必ず次作はどんな作品なのか楽しみに待たれて本を手に取る作家のうちのひとりに数えられている読者の方も多いはずだ。 本作も期待を裏切らなかった。 少なくともハートウォーミング度においては氏の過去の作品に例を見ない。 ただ誤解してもらいたくないので敢えて書くが、ハートウォーミングとはいえ、もし、泣けるような親子愛を期待して読まれた方は肩透かしを喰らうであろう(笑) どちらかというとコメディタッチなのだから。 そこは覚悟して読んでほしい。 私が作者の凄さを感じたのは、結果としてサラリーマンを奮起させるような話の展開。 もちろん、娘の姿をした父親が娘のボーイフレンドとデートするシーンも面白い。 だが、これはタイトルからして容易に想像できたことでもある(笑) あるいは、秘書課のお姉さんのラスト付近の行動に驚愕するのも楽しみのひとつかもしれない。 しかし男性読者のひとりとしてもっとも印象的だったのは、娘の心を持った化粧品会社の副部長で新商品開発のプロジェクトに携わっているお父さんの御前会議での行動。 お父さんの良いところと現実をわかってはいるのであるが、若気のいたりというか啖呵を切ってしまう小梅。 このあたりの設定(高校生がターゲットとなる新商品の開発に携わっている点)と展開の自然さが読者の胸に突き刺さるのである。 痛快さを感じて読まれた読者も多いことだろう。 決して“親の心子知らず”というわけではないのだ。 痛快さとともに、自分自身の現実をも考えずにいられないのである。 私なんかほくそえむほど余裕もない(汗) このあたり作者のアイデアの素晴らしさに拍手を贈りたい。 あなたは小さく固まっていないか? 少なくとも私自身は本を閉じた時に自問した次第である。 その結果、明日からは少しは夢を持って生きれそうな勇気を与えてくれたような気がするのである。 小梅ちゃんに感謝したい(笑) 総括すると、作品全体としては、ファンタジーでありながらリアルな話を盛り込んでいる斬新な点を高く評価したい。 結果として親子愛を描いた作品としてだけではなく、サラリーマンの指南書としても読める作品に仕上がっている。 五十嵐氏の細部にわたる人間観察の鋭さが本作をもたらせたのである。 やはり、しばらく五十嵐貴久から目が離せそうにない。 面白い(8) この作品は私が主催している第6回新刊グランプリ!にエントリーしております。 本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。(投票期間2007年2月28日迄) ...
|
|