『Lady,GO』 桂望実 (幻冬舎) - 2006年08月10日(木) <キャバクラ嬢を体験して見事に成長した主人公を描くサクセスストーリー> 桂さんの作品は『ボーイズ・ビー』以来遠ざかっていたが、本書き下ろし作品も読後感のいい作品に仕上がっている。 主人公は派遣会社勤務の南玲奈で23歳。 16歳のとき離婚した両親はそれぞれに新しい家族と暮らしていて、玲奈は一人暮らしを余儀なくされている。 かわいくないし、ネクラだし、上手に嘘もつけない性格の彼女が逼迫した生活と友だちの姉の影響でキャバクラで働くこととなる・・・ 100円単位と1000円単位。 これは派遣会社とキャバクラの時給の単位。 時給1200円と1300円の100円の差が大きいと思っていた派遣時代から、成績によって3000円が4000円にすぐに昇給するキャバクラ。 しかしながら、主人公の偉い点はそんなに金銭感覚が麻痺していない点。 どっぷりと水商売に浸からずに、自分探しのステップとして世間を知る機会としてのキャバクラ。 この作品の成功している点は、夜の世界の本当に綺麗な部分しか見せていない点に尽きるであろう。 ドス黒い裏の部分を描いていたら桂さんの描きたかった主人公像が大きく外れてしまう。 決してトップを目指して凌ぎを削らずに勤めている姿が読者の胸を打つのである。 あと、離婚した両親の現在の悪戦苦闘振りも玲奈の自立心を煽るのである。 平凡でごく普通の女の子のイメージが強い主人公、彼女のそのイメージを際立たせているのが脇役陣の強烈な個性派振り。 おかまのケイ、トップの成績の美香などなど・・・ 現実のキャバクラの世界は決してこんなに甘くないだろうけど、その一般イメージ以外の現実にもたらしている役割を垣間見た女性読者の方はいい勉強になったかもしれない。 これは推測であるが、主人公にとっていつまでもこの世界で生きていけないということを悟ったがゆえに、新しいビジネスに着手(いわば夢ですね)することが出来たのであろう。 そんな主人公に拍手と大きな声援を送りたい衝動に駆られた読者も多いことだと思う。 夜の世界を描きながらこの爽やかな読後感は、作者の暖かい眼差しが読者である私に伝わった結果だと思う。 私達は明日を見つめて生きなければなりません。 大きな教訓を得た読書となりました。 面白い(8) この作品は私が主催している第6回新刊グランプリ!にエントリーしております。 本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。(投票期間2007年2月28日迄) ...
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