『九杯目には早すぎる』 蒼井上鷹 (双葉ノベルズ) - 2006年07月27日(木) <お洒落な短編ミステリ集だが表紙ほどではないかな・・・> 作者の蒼井さんは本作にも収められている「キリング・タイム」にて第26回小説推理新人賞を受賞。 今後活躍が期待される新人作家である。 全9編の内、短編が5編、表題作を含むショートショートが4編組み入れられている。 個人的には短編よりショートショートの方が出来がいいような気がする。 短編の方は、どれもが同じぐらい後味が悪いのがなんとも皮肉な読後感となった。 その後味の悪さも、たとえばワインの苦さのようにほろずっぱく感じられる人は許容範囲なんであろうし、評価が難しいといえばそれまでなのであるが・・・ たしかに、どれもが酒を題材としていて1編1編がまるでカクテルのようだ。 ただ、表紙のように爽やかなイメージとは程遠い。 確かにヒネリがきいた展開で小気味いいのだが、前述したとおり、かなり後味が悪いのが玉に瑕である。 やはり登場人物の魅力のなさが最大の欠点なのかもしれない。 作者は小市民的な主人公を添えたつもりであろうが、私にはあまり伝わらなかったな。 どの作品も人間が小さいというかせこすぎる人物のオンパレード。 基本的には爽快感よりも、予期せぬ展開にヤラレタ〜と強く感じ満足すべきタイプの作品なのだろう。 ただ、この作家、個性的といえば個性的だといえそうですね。 たとえば表紙を開いて目次を見ると凝った作り(1作1作を一杯一杯に見立ててるのですね)と新書版での刊行などを考慮すると、お洒落な短編集として一読されるのもいいのかもしれない。 あなたも一杯飲んでみてはいかがですか? お気に入りのカクテルが見つかることを信じて・・・ あと、翻訳ミステリーファンなら各編のラストにある参考本のタイトルと比べる楽しさがあるかもしれませんね。 作者のミステリーに対する熱き想いが伝わることでしょう。 客観的に見て、ちょっぴりユーモラスでちょっぴりブラックなのがこの人の持ち味なのであろう。 次作にはもっとその持ち味が生かされることを期待したい。 時間があれば(6) この作品は私が主催している第5回新刊グランプリ!にエントリーしております。 本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。(投票期間2006年8月31日迄) ...
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