『銃とチョコレート』 乙一 (講談社) - 2006年07月10日(月) <名探偵明智小五郎のイメージで読めばエライ目にあいます。> 講談社ミステリーランドの作品。 乙一さんの単行本としては3年ぶりとなる。 よく白乙一と黒乙一という言葉が使われているが本作はどちらなんだろう。 やっぱりどちらかと言えば黒乙一寄りかな。 ひと言で言えば謎解きを含んだ冒険活劇といったところか。 冒険活劇と言えばまるでインディージョーンズみたいにハラハラドキドキするイメージもあるが、本作はもう少し泥臭い。 時代は戦争の直後ぐらいだろうか? 場所はヨーロッパのとある国であろう。 まず設定で主人公のリンツが貧しい移民の子供であるということが物語を左右する。 リンツが母親を守るシーンが印象的であった。 作者は人間の裏側を描写するのに長けた作家であるが、本作でもその長所が遺憾なく発揮されている。 それにしてもドュバイヨルって子供らしくないですね。 彼を貴族出身者にみたてたのは乙一さんらしい。 このあたり『死にぞこないの青』を思い出した方も多いんじゃなかろうか。 でも、これって小学校高学年の子供さんがいたら親の立場として読ませるかな? 途中までずっとそう思って読んでいたのである。 最後まで読んでみたら親子愛というものも感じるのであるが、途中やはり人間を裏切ったり、あるいは信じられなくなったり、また、目を覆いたくなるような暴力シーンもあったので少し複雑な気分でもあった。 個人的には作中のロイズの変貌振りには本当に驚かされた。 もちろん、乙一さんなら一筋縄では行かないとは思っていたけど・・・ 乙一さんは子供たちに固定観念を持って生きてはいけないということを教えてくれたのだろうか? そこでよく考えて見た。 講談社のHPを閲覧することとする でも講談社のミステリーランドの宣伝文句を見てみると“かつて子どもだったあなたと少年少女のための・・・”と書いてある。 ということは単なる子供向けじゃなくって、大人&子供兼用の本だということだ。 私はずっと子供向け→子供用と思っていたのであるが、そうだったらわかる。 明智小五郎(本作で言えばロイズ)が悪者になれば子供たちの夢を壊すし物事を根底から覆す。 でも大人の世界ではOKだ。 基本的に本作は、本好きの大人が小中学生の頃、謎解き小説を食い入るように読んだことを思い起こさせてくれる本なのです。 よく考えれば、優しさに溢れていない挿絵からして子供向けじゃないですよね。 あとがきもいつも以上に面白い。 でも子供が読んだらブラックジョークわかるだろうか疑問ではある。 やっぱり大人向けだ(笑) 世の中の酸いも甘いも噛み分けた方が読まれたら、少し主題が曖昧なところもあるがきっと楽しめる娯楽作品であるのには間違いない。 ただしひらがなの多さやルビふりに我慢する忍耐力が必要であるが。 私は本作を読んで、かつて紙芝居に夢中になった幼少時代を思い出した。 あなたも極上の娯楽作品を楽しみながら、あの日あの時を振り返って欲しい。 そう、チョコレートが大好物だったあの頃を・・・ 面白い(8) ...
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