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『もしも、私があなただったら』 白石一文 (光文社) - 2006年07月06日(木)


白石 一文 / 光文社(2006/04/20)
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<テーマは尊いのだが、登場人物に魅力が乏しいのが残念。>

女は心と身体で生きる、男は目と頭で生きる。
男に好きになってもらうのが仕事の女性と、女を好きになるのが仕事の男性。

白石一文さんの書き下ろし最新長編を手に取ってみた。
主人公の藤川啓吾は49歳。
東京の勤務先を退職し地元九州に戻ってきてバーを開き6年になる。
元妻とも離婚、のほほんと孤独な生活の毎日を送っていたある日、サラリーマン時代の親友だった神代の妻・美奈から突然電話がかかってきて、内密な相談を持ちかけられる。

内省的で思慮深いのが白石さんの登場人物の特徴かもしれないが、少し懐疑的過ぎないかなと言うのが率直な感想。
話の展開的には始めは美奈を追い返そうとし、その後、タイトル名でもありキーワードともなっている6年前の別れの時の言葉「もしも、私があなただったら」から、美奈の重要性を認識して行く姿が描かれたいわば純愛物なのだけど・・・

美奈を愛することによって、思いやりっていうものが芽生えてきたのでしょうか。
何の疑いもなく啓吾を愛する美奈とのコントラストが印象的であった。

愛することはたやすいけど、信じることはむずかしいのかもしれませんね。

冒頭に引用したテーマ。
素晴らしい言葉で本当に的を射ています。
作中で白石さんの言いたいことはよくわかるのであるが、主人公の男としてのスケールが小さくって噛み合っていないというのが正直な印象。
途中で主人公が美奈の夫に会いに行く場面があります。
そこで今まで知らなかった美奈の男性遍歴を聞き唖然とするシーンがあります。
そのあとの懐疑的になる場面と、ラストの疑いが晴れる場面の安直さがちょっとどうかなと思いました。
結局、主人公に確固たる信念を感じられなかったのが残念である。

タイトル名は何回か作中で出てくるのだけど、相手に立場に立って考えることの重要性を謳った言葉である。
でも、本当に心が通じ合ったのであろうか?
個人的には、主人公は本当に幸せになれるのだろうか?という疑念が湧くのである。
ひょっとして尻に敷かれっぱなしになるのではないか?
通常、ハッピーエンドって読者にとっても晴れ晴れすることである。
だが、本作は・・・
いずれにしても美奈のしたたかさが目立った小説でした。
怪我をしたのも半分故意のような気もします(ちょっと考えすぎかな)
従兄弟の慶子といっしょになった方がよっぽど主人公にとったらしあわせだったのに・・・そう思われた方も多いんじゃないかな。

是非、読んで確かめてください。

期待はずれ(5)

この作品は私が主催している第5回新刊グランプリ!にエントリーしております。
本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。
(投票期間2006年8月31日迄)



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