『銀河のワールドカップ』 川端裕人 (集英社) - 2006年07月05日(水) <4年に1度のワールドカップ期間中にこの本を読めた幸せ!> 少年サッカーを題材とした夢のある小説である。 何せ、目指しているのが日本一じゃなくって銀河一なんだから。 この小説の魅力はそのタイトルに集約されていると言っても過言ではない。 コーチとなるのは元Jリーガーの花島勝。 とある事情で失業中のある日、公園で発泡酒を飲みながらミニサッカーに興じている小学生達のスーパープレイを目の当たりにする。 指導者として暗い過去がある花島であるが、竜持、鳳壮、虎太の三つ子のプロ並のテクニックに驚愕したのは事実。 彼らの仲間である翼から不在であるコーチを頼まれ、サッカーの魅力に負け引き受けることとなる。 途中で、過去の事件により一旦コーチを退くがのちに復帰。 そこからはライバルチームから青砥や多義が加入し、まさに快進撃が始まるのである。 終盤に憧れのレアル・ガラクシア(レアル・マドリード)との対決シーンがあります。 まるで読者自身がプレーをしているかのごとく・・・ 何と言っても、試合中のシーンの臨場感が良い。 これは『チョコレートコスモス』で恩田陸が演劇のシーンで読者を身震いさせたものに匹敵する。 私は手に汗握りながら読みました。 そう、ワールドカップで日本戦を見たのと同じように。 川端さんの凄いところはやはり、所詮ファンタジーなんだけど、たとえば試合の戦術面がリアルに描かれている点。 登場する少年達(2人少女も混じってますが)の個性派ぶりや能力の差の描写もこの小説を素晴らしいものに仕立てている。 才能高い青砥や三つ子三兄弟もいいのだが、やはり翼の存在感が絶大である。 まず、最初に翼が花島にコーチを依頼したことは見逃せない。 あと彼が終盤に後ろから(DF位置)声を嗄らせながら大きな指示を出すシーンは多くの読者の胸を打つシーン。 彼が技術的に少しずつ上手くなっていくところは、現実的ではない小説の中で読者にとって胸に刻み込まれるほど印象的なものである。 まるで“やれば出来る”と言うことを作者が読者である大人たちに教えてくれているようだ。 あと、監督である花島であるが、彼自身の再生小説として読んでも価値の高い1冊だと思う。 なぜなら、いつまでも“サッカー小僧”の面を持ち合わせているのは他の少年達に負けないからだ。 物語を通して、一番精神面で変化したのは花島のような気もする。 さあ、あなたも観客席に座って桃山プレデターの試合を是非御覧になってください。 きっと自分が体を動かしている気分になりますよ。 書き忘れましたが、数年後エリカや玲華のなでしこジャパンで活躍しているシーンが目に浮かぶ。 なにっ、エリカはともかく玲華は無理だって(笑) オススメ(9) この作品は私が主催している第5回新刊グランプリ!にエントリーしております。 本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。(投票期間2006年8月31日迄) ...
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