『ぼくは悪党になりたい』 笹生陽子 (角川書店) - 2005年04月07日(木)
主人公のエイジは17歳の高校生。 頻繁に海外に出張するシングルマザーの母ユリコ。 ユリコの代わりに9歳の異父弟のヒロトの面倒や家事全般を見ることを余儀なくされている。 エイジが修学旅行の際に、ヒロトが水疱瘡にかかり、母親のアドレス帳から選び出した杉尾さんに弟の面倒を見てもらうのであるが・・・ この作品は読んでいて本当に楽しい作品である。 “青春小説も変わったものだなあ!”と驚かれた読者も多いんじゃないかな。 ほとんど登場しない母親のユリコ、イケメン友だちの羊谷、その彼女アヤ・・・ まさに個性派揃い・・・ 一方、主人公のエイジはどうだろうか? 人生においてもっとも好奇心旺盛で羽根を伸ばしたい年頃である高校生の頃、主人公のエイジは本当に抑圧された生活を送っている。 しかしながら読者と言う強い味方をつけてしまうのだから幸せ者である。 作者の笹生さんは児童小説のジャンルではかなり有名な方みたいである。 一般向けに書かれた本作も作者の高いセンスを感じずにはいられない。 コミカルな人物設定の中にもホロッ〜と感じられるシーンがやはり一番いいかな。 特に羊谷との熱き友情部分が印象的だ。 私が強く感じ取ったのは、主人公のエイジはどちらかと言えば、母親の“自由奔放さ”というよりも父親(誰かは読んでのお楽しみ)の“気配りの上手”さを受け継いでいると言って過言ではないのだろう。 そのあたりを感じ取れるかどうかがこの作品に対する評価を左右するのだと思う。 多少、読み手によっては消化不良と感じられるかもしれない。 この種の作品は主人公に年齢の近い人が読めば読むほど“主人公の気持ち”がわかるのであろう。 ただ、主人公と同年代の世代の方が読まれたら“腹八分目”ぐらいで丁度いいのかもね。 “毎日がめまぐるしく変化していく”・・・ きっと青春の特権なんでしょう。 本好きの方は、性別問わず主人公エイジを愛さずにいられないであろう。 とにかく気軽に読めて楽しめる作品であることは強調しておきたく思う。 評価8点 2005年30冊目 ...
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