『鞄屋の娘』 前川麻子 (新潮社) - 2005年04月05日(火)
前川さんの小説は『ファミリー・レストラン』に続いて2冊目であるが本当に魅力的な女性を描く作家であると思う。 どちらかと言えば女性作家の方が好きな私であるが、他の私の愛読する女性作家と一線を画する作家を好んで読むようになるとは夢にも思っていなかったというのが偽らざる気持ちである。 本作は小説新潮長篇新人賞受賞作で前川さんのデビュー作となるのであるが、今まで培ってきた女優としての才能をも一気に小説の世界の中にも発揮させたと思うのは果たして私だけであろうか・・・ 心に寂しさをずっと抱えた主人公前原麻子、作者と一字違いである。 どうしても読者は前川さん本人とオーバーラップさせて読んでしまう。 いわば主人公の魅力は前川さんの眩惑的な魅力とも言えよう。 正直なところ、随所にわかりづらい部分もあるような気がする。 それは男性読者の宿命であろうか・・・ しかしながら傷つきながらも、本当の家族・家庭のあり方を模索していく点は胸を打つ。 やはり“鞄屋の娘”というタイトルどおり、父親に対する愛情は離れてても持ち続けたと純粋に受け止めたい。 私自身、前川さんのひととなりに興味を持っているのは否定できないところである。 それだけ、単なるフィクションとして割り切って読みきれない“凄さ”を感じるのである。 前川さんの作品は数作を読み切ってから彼女自身の全体像を探りたく思うのであるが、少なくとも本作に関して言えることは、本作の主人公を幸せと感じるのかあるいは不幸と感じるのか、あなた自身の価値観を考え直すきっかけとなる作品だと言えそうだ。 私自身は、“希望”というものを垣間見たような気がする。 その“希望”とは帆太郎に対する愛情で一番に感じ取れたことは言うまでもない。 残念ながら、本作は現在は絶版となっている模様。 心から復刊を望みたく思う。 評価7点 2005年29冊目 ...
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